映画『ナイロビの蜂』
映画『ナイロビの蜂』を観ました。軽い気持ちで観ていたらすごく衝撃を受けたので、ご紹介。ネタバレありなのでご注意を。
そもそもこの映画は原作があるとのこと。そして原作の小説も、実在の人物をモデルとしているそうです。
主人公である英国外務省一等書記官・ジャスティンの妻・テッサのモデルになっているのが、慈善事業家イヴェット・ビアパオリ。
ナイロビで行われている非人道的な薬物実験に異を唱え、強盗殺人に見せかけて殺されてしまったテッサ。どこまでが実際に起こったことなのかは、ちょっと分からないけど。
以下、あらすじと感想をつらつら書いていきます。まとまらない。ちょっと解釈が難しかったので、理解が及んでない箇所があったらすみません。
テッサのこと
※テッサは最初のうちはただ「外交官の妻」として現地ナイロビで慈善事業をしていたんだけど、そのうちに大きな陰謀を知ってしまう。
そしてそれを看過できずに、結果的に自分の幸福を犠牲にしてしまう、だけどそれこそがテッサの生き方なのね…という複雑さ。
その複雑さを、テッサの死後夫が受け入れていく過程の話なんだけど、細部の描写が一筋縄ではいかないというか、まあとにかく心に迫る描写で。
※外交官の妻が慈善事業、と聞くとなんか片手間に行っているような印象を与えるのに(偏見ですみません)、片手間を越えてテッサが本気になっていくと周囲からは「のめり込み過ぎ」と見なされてちょっと浮いてしまうところとか。
いいことなんだけど、立場わきまえろよ的な周囲の反応。
※のめり込んだテッサが自分の出産にも現地の病院を選んで、(主人公は内心反対?でも妻の好きなようにさせて、周囲の無理解から守る姿勢を見せる)結果的に流産してしまう、でもその原因は特には分からないままっぽい。
病院のせいとも言えないような。
この辺りの悲哀はただ「子供を亡くした夫婦」としての悲しみや揺れ、乗り越え方を描いていて。
ジャスティンのこと
※テッサの死の原因が分からず、最初のうちジャスティンは「浮気発覚?」と思って(男性と「いるはずのない場所」にいるところで殺されたので、「もしかして浮気旅行だった?」的な疑問が浮かんでしまう)、その動揺と、でも妻を信じたいと思って色々調べ始める。
※調べていくうちにガチで浮気っぽい手紙を見つけてしまったんだけど(男性からテッサに宛てたラブレター。「お互い離婚して一緒になろう」と書かれている)、後にテッサが親友に宛てた他の手紙で書いている「私はある秘密の文書を手に入れるために色仕掛けをしてしまった、それは製薬会社の悪事を暴くために必要なものだったので自分なりの最善を行ったんだけど、何にせよ夫がこれを知ると悲しんでしまう」という文章を読んだジャスティンの複雑さったら、もう!
※製薬会社の資料をまとめてあるパソコンファイルの中に、ジャスティンの寝姿の動画が入っていて、動揺。
雑多すぎるけど「とにかく大事なもの」入れファイルだったのね…みたいな。
※製薬会社だか政府関係者だかちょっと分からないけど、「新薬の発売を邪魔する一般人許すまじ」みたいなプレッシャーすごいな、とか(テッサの知り合いの主婦とかめっちゃ怯えてる)。
新薬は早いもの勝ちになるから、良くなかった治験結果を隠蔽してでも発売にこぎつけたいわけで。このへん陰謀論ちっく。
※そしてジャスティンはどうして最後そんなことになるのか!
あー、おうちに辿り着けそうにないって分かっていたのかもしれないけど、新聞社に持ち込むとかしてほしかった…そうしなかったのは「もう真実は分かったから妻のいない世界に意味ないや」みたいな、それも愛なのかしら、とか。
ちゃんとあの人が手紙の秘密を暴いてくれたからよかったものの。
最終的には、大企業とか政府とかの黒い思惑を知ってしまった個人がそれを暴くには、個人としての平和や幸福を犠牲にするしかないのか、という面を強く感じてしまいました。
全体的にジャスティンの回想が多いこともあって、過ぎ去った届かないものへ手を伸ばす感じが、VS大企業との対比に伴って儚く見えてしまう、何かと悩ましい映画でした。
日本語訳も出ているようなので本読みたい。

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