(2022/06 更新)
色々なジャンルの本を読むのが好きな、きまや (@kimaya4125)です。
でも主にフィクション。
テーマ被りを集めてみよう!という企画です。今回は「旅」で!
それは「旅」なのか「移動」なのか問題
とは言えまずは、「旅」の定義。
主人公たちが必要に迫られたり話の筋に沿ったりで、旅する小説ってかなり多いんです。
『逃亡くそたわけ』とか『右岸』とか。『ダンス・ダンス・ダンス』も。『みちづれはいても、ひとり』もそう。
でも、主人公が動いているっていうのは単に「移動小説」みたいなところがあって、「ザ・旅!」っていう感じではないなぁ…と思います。
旅そのものに焦点を当てている小説って、あまりないような。(フィクションだから当たり前ですね。旅にフューチャーしたいならノンフィクションの旅行記でいいんだから。私はエッセイが好きだ)
今回は「旅!!!」な感じでフィクションを集めてみました。
かつ、「旅 小説 おすすめ」でググった時にいっぱい出てくる感じじゃないヤツ(主観)です。
旅屋おかえり
旅屋おかえり (集英社文庫) | ||||
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これは有名なので、ググって出てくる系です、すみません。でもこれ良いのです。
そもそも作品の出来が良くて、「これ二時間ドラマにしたら面白くなりそうだな~」と思いつつ読んでいて、途中から「いや、これは1クール行ける!」と。なんならシリーズ化できます。
『本日は、お日柄も良く』系統ですね。ハートウォーミング。
あらすじ
売れないタレントだった「おかえり(丘えりか)」が、旅「代行」業を始めるという設定。なぜ旅の代行なんて成り立つのか?その依頼者たちには、どんな事情が?
…って引っ張るのかと思いきや、ラストはおかえりの恩人である事務所社長の過去にズームしてきて、なかなか単純じゃない話の作りです。ドラマ向けだ~。
文章そのものはコメディタッチで、気楽~に読めます。
もともと、原田マハってすごい人で。
直木賞候補に何度もなっているからじゃなくって、もっと
この人、元から才能に溢れていたんだけどそれを生かすために試行錯誤しながら努力したんだろうな~、と思ってたら
実は裏があって、彼女の計算通りに現実が動いていた。
みたいなすごさです。もはや畏怖。
詳しいことはエッセイで。
フーテンのマハ (集英社文庫 は 44-3) | ||||
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このエッセイを読んでから、彼女のことをとても尊敬してます私。原田宗典の妹さんである点を差し引いても、この人は単にすごい。執念がすごい。
そんな彼女は真性の旅好きだそうで(旅への思いもエッセイに書いてありました)、だから『旅屋おかえり』が生まれたんだろうな、と。
初めは悶々と家に引きこもっていた。どうしたらいいのかさっぱりわからなくなって、どうしようどうしよう、と部屋の中をうろうろ、うろうろ。そのうちに、そうだ、こんなときこそ旅に出ればいいんだ、と思い立った
『旅屋おかえり』 単行本p273
僕らが旅に出る理由なんて、きっとどんなことでもいいんだ、と思える一冊。
ドラマ化されたし続きも出てます!
ときどき旅に出るカフェ
ときどき旅に出るカフェ | ||||
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作風が幅広いことで知られる、近藤史恵。代表作『サクリファイス』は、自転車競技ものだったり。耽美系もあったり。姉といっぱい読んでるよ。
『ときどき旅に出るカフェ』は、ゆるめミステリ。分類するなら日常の謎系で、ちょっと安楽椅子探偵っぽいでしょうか。
あらすじ
主人公・瑛子が近所に見つけたカフェ・ルーズは、こぢんまりしていながら多国籍なメニューが出る不思議なお店。メニューを考えているのは昔の同僚・円。
旅をして食材を仕入れてくる円の見知らぬ料理に惹かれつつ、瑛子は集まってくる常連たちと話すのが楽しみに。けれど円の過去には複雑な因縁があり…?
と、常連たちが繰り広げるハートウォーミング日常ネタをちょっと推理、みたいに展開する前半。それだけでも充分に面白い連作短編集で、カフェ店主である女性の頭がキレるので爽快!
料理が多国籍で、知らない調理法ばかり出てきます。お腹が空きます。食文化って面白い~~~。
で、「常連」と言いつつ馴れ合わない距離感なんですよ。
そこが読んでいて心地良い!
そして後半になると、店主の過去の話へ。主人公と店主は昔同じ会社に勤めていたんですが、退社する時にちょっといざこざがあったり、お家騒動があったり。 いやー、普通じゃ終わらないね、近藤史恵!
空港時光
空港時光 | ||||
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新しめの作家さん。
連作短編集なのであらすじというものはないのですが、空港を巡るお話が満載です。行ったり帰ったり、主に台湾との行き来について。
台湾と日本の関係って、難しい。不勉強につき詳しいことは分からないのですが…。
台湾の人って優しいイメージがありますが、そのイメージだけを無邪気に抱いて過ごしていると、大切な叙情を取り逃してしまうんだろうと思う。
作者さんは、台湾で生まれて日本で育ったという経歴だそうで。
親御さんが家で台湾語を話し学校で自分は日本語を話す、台湾語と中国語はとても近い、ということで、言語感覚が鋭くいながらそんな自分に居心地の悪さもあり…という印象を受けます。
で、空港の、アジア圏の、キラキラした多国籍感!かなりの旅情を感じます。
よく飛行機に乗る人や、アジア圏に旅に行く人にとてもオススメしたい一冊です。
各方面から注目されていると思うんですよね、インタビューや書評をたくさん見かけます。
あたらしい「日本語文学」の地平――温又柔・多和田葉子のいま(Book Bang) - Yahoo!ニュース
「国語」の呪縛から解き放たれてやっと書けたこと、どうしても書きたいことと出会えた。そんな私を"世界文学の現在"という文脈で、私が最も敬愛する作家の一人である多和田葉子さんとともに"多言語のはざまで書く作家"と評する江南亜美子さんのことばに、とても救われる🍀 https://t.co/5aOIOBDZSd
— 温又柔 온유쥬 (@WenYuju) 2018年9月11日
エッセーで自分語りをし、同時に小説で、世代や性別、国籍の違う様々な人々の主観に入っていく。(都甲幸治さん評)
— 朝日新聞読書面 (@asahi_book) 2018年9月8日
(書評)『空港時光』 温又柔〈著〉:朝日新聞デジタル https://t.co/nvU0U7ybzP
「空港時光」発表直後のインタビューが全文アップされてる! うれしい。インタビュアーである現役大学生の方との対話が楽しく、彼女が完成させた充実した記事にも大変励まされました。よかったらご覧ください🌱
— 温又柔 온유쥬 (@WenYuju) 2018年9月8日
→対談 「多様な視点で考える」読書のいずみ |(全国大学生協連) https://t.co/N93Jo6xQPt
さて、他に…?
(『深夜特急』は未読です、すみません)
考える。
柴崎友香もよく移動してるよね…あれは散歩か。
絲山秋子で他にもあったような…。いや、飛び立っただけだ『離陸』は。三浦しをん...瀬尾まい子、いや、このへんは走るか食べるかばっかりだな。島本理生はたいてい不倫旅行だし吉本ばななは旅先でスピってくるし、うーん。
じゃあ、映画化された、これ!
旅猫リポート
旅猫リポート (講談社文庫) | ||||
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あらすじ
一人と一匹のロードノベル。主人公はサトルとナナ。サトルは昔飼っていたハチに似た模様の、元野良猫のナナと仲良く暮らしていた。
けれどある時、一人と一匹は旅に出る。「僕の猫をもらってくれないか」と旧友に訪ねて回るサトルに、饒舌に反発しながらナナが目論んでいる結末とは…?
これは、レビューしにくい話。ただただ嗚咽してた記憶しかない……。そして文庫になってからもう一度再読しようとしたら、15ページ目で泣いたね。我ながら早すぎる涙腺の崩壊。
有川浩が刺しにきたらこちとら即死だよ!
色々な家を巡る話でもあったので、その家その家の特徴や人間関係(動物含む)が、読み応えありました。主人公の半生をめぐる、北への旅。そして猫がよく喋る!
映画は、風景が見応えあると思います! 猫のお喋りが楽しかった。猫好きな人は、これ読んで吐くほど泣きましょう。
ラダックの星
ノンフィクション作家、中村安希さんを読んだのは初めてでした。
これは不思議な手触り。エッセイのようであり、けれどフィクション化もされている。ノンフィクションと言い切ることはできない話の流れ方。が、細部がリアルで実際に起こったことである気配がします。
旅行記であってフィクションでもある、星を追う話。寒さの極限にある雪山で、亡くなった友人の貯金の行方を思う、あるいは彼女との思い出を噛み締める。
頭の中を流れていくような学生時代の回想が、美しくも切なくやり切れなさを感じつつ、友達であったという事実は消えない、たとえいなくなっても。
当たり前に会えていた頃と会えなくなってからの関係の奥行きを感じて、学生時代の友達が懐かしくなる一冊。友達に勧めました。
空ばかり見ていた
吉田篤弘さんを読むのは2作目でしたが、これ、とてもよかった…。
あらすじ
ホクトという名前の「流しの床屋」さんが、旅をして、色々な人と交流して…という内容なんですが、旅先で出会う人の日常が丁寧に書かれていたり、むしろホクトさんが語りだしたり、
途中で翻訳小説の中身になってしまったり、ギリシャ神話の時代に飛んでしまったり…
ホクトさんの人柄が朴訥としているところ、流浪する人生の不思議さ、そして最後の一文へと続く、恋心と友情。
寓話っぽい雰囲気もある、12の連作短編集です。少しずつ読んでいっても楽しいと思います。
吉田篤弘『空ばかり見ていた』読了。ホクトという流しの床屋さんにまつわる話…だけど途中で翻訳小説の中身になったり映画になったりギリシャ神話っぽくなったり本人が語り出したりする連作短編集。出会う人たちから見た飄々としたホクトと、本人の迷いっぷりが不思議な感覚。
— きまや (@kimaya4125) 2020年8月19日
夜行
『太陽の塔』、『夜は短し歩けよ乙女』などで有名な森見登美彦さん。はてなブロガーでもありますよね!最近ではアニメのイメージが強いでしょうか?
ファンタジーかな、と手に取った『夜行』が、かすかに旅小説だったのでラインナップに入れておきます。
日本各地、実際に行った人の話を聞く、という感じなのですが、アラビアンナイト的な雰囲気があり、抒情にあふれております。少し怖いが。
森見登美彦『夜行』読了。プチ千夜一夜物語のように、失踪した人を巡るような日本を巡るような話が語り手を変えて続く。あちら側とこちら側?絵の中とこちら、という簡単な感じでもなく。『熱帯』に繋がる雰囲気がすでに濃くあるなぁ。
— きまや (@kimaya4125) 2020年11月14日
次に読みたい 『そして旅にいる』
比較的あたらしいこちら。
加藤千恵さん自体未読なので、これを機に読んでみたい!ので、リストに追加しておきます。(読んだら追記します!)
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