2022/12 更新
同世代で同県出身で同性のアーティストを追いかけてしまうことってないですか?私はある。椎名林檎もその枠。
で、最近は一木けいさんも。
そして今回、また良い作家さんを見つけました!
櫻木みわ、という人。
というか知らずに一冊読んで、Twitterでの人気っぷりに納得しつつ深く感動して、それで経歴を調べたら2歳年上の福岡出身の方で。あぁ同じ時期に同じ市にいたんだなぁ…と。
※今は滋賀にお住まいらしいです!
びわ湖の沖島に移住した作家の櫻木みわさんが小学生に特別授業|NHK 滋賀県のニュース
まあ、そんなことはある意味どうでもよくて、作品がすばらしかったので語らせてほしい。とりあえず今、本になっているのは3冊。(2022/12/25時点
コークスが燃えている
コークスとは…石炭を乾留(蒸し焼き)して炭素部分だけを残した燃料のことであるby Wiki
こちらは長編です。が、そんなに長くない。しかし濃い。
自分という燃料を燃やしつつ生きる、筑豊出身のアラフォー女性。歳下彼氏とはちょっと前に別れた、弟の元カノに絡まれる、非正規雇用なので将来が不安…という主人公の、とても濃密な数か月のこと。
マジで痺れました。
ははは、何もあらすじ説明できない。たまにあるこういうの。単に、あらすじを言うとネタバレになっちゃうからってわけじゃなくても、何を説明したとしても何も伝わらないだろうという感覚。葛藤を生きている、人からさまざまな不自由を強いられている、心だけが自由。燃え盛る。
ちょっとシスターフッドか。話に共感しすぎて必要以上に辛くなっちゃう系以外の人は、みんな読んでください。リアルすぎて。
そうそう、櫻木みわ『コークスが燃えている』を一週間前に読了しているんだけど感想なんて何も書けない、よかったし一部で褒め称えられているのに扱いが地味になる感じも理解し、県民賞とかあげてほしいです。同世代の葛藤ナイス筑豊だった。
— きまや (@kimaya4125) 2022年9月22日
友達にいちおう『コークスが燃えている』の話をしてみたけど、共感型なので無理そうです。泣きたいわけではない私たち。地元だけれども!
— きまや (@kimaya4125) 2022年9月27日
うつくしい繭
短編集、かすかに連作。その連作のさせ方が、切ない。気づかなくても読めるけど、国を変えて時代を変えても繋がっていた人の想い、という感じ。
これ、驚いたんですがちょっとSFなんですよね。
それでいて旅小説でもある。
それぞれのタイトルと、目次に表記されている地名をご紹介。
- 苦い花と甘い花〈東ティモール〉
- うつくしい繭〈ラオス〉
- マグネティック・ジャーニー〈南インド〉
- 夏光結晶〈日本 九州・南西諸島〉
この作品の更に驚いたところは、1と2は、とある創作講座の課題提出作品ってことです…。つまり作家になるための講座を受けていて、その中で書いた習作なんです。
それにしては完成度が高すぎて!!
(もちろん、単行本化にあたって手を入れているだろうけど
4で、SF新人賞の最終候補まで残っています。でも受賞自体はしていないため、そんなに売り出されていない。
ゲンロン大森望SF創作講座の最優秀賞である「ゲンロンSF新人賞」第4回受賞者が決定しました。 - webゲンロン
けど、そこはやっぱり大森さんだから?単に作品がいいから?ゲンロンだからか!
しっかり単行本化されて販売されています。ありがとう誰か。
そして印税の一部は、各国に寄付されるそうです。それぞれの国に思い入れをお持ちなんでしょうね。現地で働いていた、ってプロフィールにありますし。
1だけ主人公が現地の人(少女)ですが、その他では日本人女性が主人公です。だから2や3の方が最初は入り込みやすいと思います。ファンタジーに強い人は1好きそう。1はちょっと寓話風なところに、現代の風が吹いた感じよね。
で、個人的には表題作の2がすごかった!のですが、読み通して考えてみると、4の告白のシーンが心に残っています。あまり世の中にない、だからこそ良いセリフ。
「おれはね君の珠をみて、君という人間がほんとにすきになったんだ」
もちろんここに行くまでに色々なことがあるからこそ、生きるセリフです。この告白に主人公関係ないし、なんというか全体的に傍観者なのですが、まあとにかくこれは描写が良い。
櫻木みわ『うつくしい繭』読了。表題作がとてもよかったが、ゲンロン大森望SF創作講座で認められたのはラスト作品かな?つまり、倍すごいね。連作短編集とも言える、通底するアジアの喧騒と昔の戦争に、少しSF風味。『コークスが〜』とはまた違った雰囲気で楽しめた。
— きまや (@kimaya4125) 2022年9月30日
サラッと読めるけどラストが衝撃な3も好きです。
刊行後のインタビューはこちら。人となりの分かるエピソードたちです。クンデラ推しです!
『うつくしい繭』櫻木みわ|講談社文芸第三出版部|講談社BOOK倶楽部
【新刊】カサンドラのティータイム
カサンドラのティータイム 櫻木みわ(著/文) - 朝日新聞出版 | 版元ドットコム
【拡散いただけたら嬉しいです】
— 櫻木みわ (@pinako45) 2022年11月7日
小説『カサンドラのティータイム』が発売になりました。身近な人の言動に苦しんだことがある人、そういう話に触れたとき「たいしたことじゃない」「ただの内輪の問題だ」と思ったことのあるすべての人に読んでほしいです
装画=いえだゆきなさん
装丁=田中久子さん pic.twitter.com/fMV9G2LoK6
カサンドラって、あの「カサンドラ症候群」のこと、でしょうね…。
帯に「巧妙な支配と暴力」ってあるので、間違いないと思います。抑圧された女性の話を書くんですね…。
正直、私も30代の10年間、これを発症していたと思います(今は離婚したので大丈夫ですが、後遺症としてあんまり人と深い話をしなくなりました)
読了しました!やはりカサンドラ症候群のお話でした。
櫻木みわ『カサンドラのティータイム』読了。自己愛性パーソナリティ障害な人に行き当たる人たち、根深い連鎖…。2人目の女の選択、セリフに心震えるものの地獄につながっていそう、でも一度はやってみたいよね〜。「頭がいい人だから」「それでも駄目なら馬鹿だから」ここまで書けるのすごい。
— きまや (@kimaya4125) 2022年12月26日
その他、短歌と短編
そして他にも、雑誌に掲載されたけれどまだ単行本化されていない作品や、短歌などもあるそうです。短歌読みたい…。
こちらの文庫に、短編『しおかぜ』が収録されています。舞台は現代日本で、拉致問題。
とてもオススメなのでみなさん読んで!
【その他に追っている作家さん】