橋を渡っていた。
車での移動は早すぎて、景色が視界を流れ去ろうとするのを私は目で追いかける。せわしない眼球運動だ。
なんという名前なのか分からないが、橋には白いアーチがいくつも架かっている。美しい形をしている。
以前、このアーチが橋を支えていると言うことを友人に教えられたときには驚いた。上にあるこのいくつもの柱が単なる飾りではなく、更には橋にとって重みではなく支えとして機能することに。
橋の下にはもちろん川がある。大きな川だ。上からではその流れが認識できないので、太い水の帯のように見える。そこに映るものを私は見る。雲や太陽、川辺の大きな建物やら。そしてただの空気とでもいうようなものが、ひっそりと映し出されていることを発見する。
決して平らではないその水面には、たくさんのものが映っている。見えるものも見えないものも。
対岸が近づく。模型のように見える家々が並ぶ丘が近づいてくる。緑が濃くなってくる。ざわめきが遠くから戻ってくる感触がある。そこには人がいるのだ。
けれど車はそれさえも走り去る。橋を経て水上を経て、人家の立ち並ぶ小高い丘の中腹を縫って、ただまっすぐに目的地へ向かって、スピードを緩めずに走り去る。
もうすぐ着くよ、と声がする。私はただ、もう一度橋を渡りたかった。もう一度、もう一度だけ。何度でも、もう一度だけでも。