こんな記事がありました
(1/2) 「チーム・バチスタ」作者が本屋大賞を痛烈批判 書籍の売り上げ低下傾向に拍車を掛ける? : J-CASTニュース
この記事を読んだ私の、色々な所感を書いてみたいと思います。「素人の意見なんか聞きたくないよ!」という方はそっ閉じでお願いします。
※※※
まず、こちらで発言している海堂尊さんですが、いわゆる「バチスタシリーズ」のベストセラー「チーム・バチスタの栄光」の作家さんです。
第4回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作品ですね。
受賞当時は題名が「チーム・バチスタの崩壊」だったそうです。刊行時に改題したそうですが、素晴らしい改題だと感心します。「崩壊」だとネタバレです。
映画とドラマとゲームにもなっています。映画は原作と違って主人公が女性になっていて、竹内結子さんがよかったです。
本屋大賞とは
本屋大賞とは2004年(平成16年)に設立された、本屋大賞実行委員会が運営する文学賞である。一般の文学賞とは異なり作家・文学者は選考に加わらず、「新刊を扱う書店(オンライン書店を含む)の書店員」の投票によってノミネート作品および受賞作が決定される。
作家や批評家ではなく、一般人である「書店員」が作品を選ぶということで、開設当時から話題になっていて、でも最初はそんなにメジャーな賞でもなくて、近年やっと注目されてきた感じです。
最近では、開催時期にフェアを開いている書店も多くあります。
何が問題なの?
最初の記事の内容を書き出します。
2014年4月の本屋大賞の結果発表を控え、小説家の海堂さんは2月24日、公式サイトを更新して「本屋大賞は書籍の売り上げ低下傾向に拍車を掛ける」と苦言を呈した。「本屋さんが一番売りたい本」として選ばれた作品の宣伝に書店が力を入れて百万部も売れる一方で、「本来なら平台に置かれるべき本がのりそびれた」と指摘した。
ということで、これだけでは誤解があるといけないので公式サイトも引っ張ってきます。
なかなか辛辣なご意見です。
肝になる文章は
本屋大賞の本が百万部売れたとしても、本屋さん全体が総力を挙げて売るわけだから当然です。その裏側で「本屋さんが一番売りたい本ではない」本が、次々に討ち死にしていくわけです。本来、出版業界というものは本来、植林していかなければ滅びてしまうのに、本屋大賞は伐採商法なのです。
という点かなと思います。
海堂さんがサイトに書いているように、本当に去年本屋大賞2位だった横山秀夫『64』が5月には平台から消えていたなら、それは大きな損失だと個人的に思います。
『64』めっちゃ面白かったのに!今までの警察小説の中でダントツに好きです。
「これは一番じゃないから」と言われて扱いが悪くなるなら、確かに順位を決めることにはデメリットしかなくなりますね。
そもそも開設当時の本屋大賞は、本好きしか見ていなかったという理由もあるかと思うんですが、私の感覚では「選ばれた10冊は全部おもしろいよね(でもエンタメ系が多すぎるよね)」という印象です。私の周囲だけかもしれませんが…。
それが世間に注目されたことによって、過剰に「一位と、それ以外」という構図が目立ってしまったなら、それは賞として欠陥があると海堂さんが苦言を呈するお気持ちも分かります。
正直に言うと私も、最近の本屋大賞作品はそんなに好きじゃない点もあります。
だいたいノミネート前から知っている作品ばかりで、エンタメ系の本をよく読んでいる人には物足りないものになりつつあります。
開設当初は面白い賞だったのになー、普通になっちゃったなー、と思わなくもないです。
それでも意義がある?ない?
それでも本屋大賞というのが、本を読むための入り口になっていることは間違いないとも思うんですよね。
例えばネット上でもリアルでも、Twitter文学賞よりも本屋大賞の方が知名度があります。今年はTwitter文学賞の方が投票人数が多かったんですけどねー。
今年のTwitter文学賞の1位作品、国内と海外。
「Twitter上で、好きな本を一冊だけ投票できる賞があるんですよ!誰でも投票していいんですよ!」と言っても
「なんかマニアックそう…日頃そんなに本読んでなかったら投票しちゃいけないよね」と思う人が多いみたいですが、
「書店員さんたちが面白い本に投票してるんですよ!」と言うと「なにそれ面白そう」っていう反応が多いです。(私調べ)
でもここで「本当に海堂さんの言う通りだな」と思うエピソードも。
一度、パート先の上司に本屋大賞について話したことがあります。
「きまやさん本よく読むなら、何か教えてよ。どうやって選ぶの?」と聞かれたので、その時に結果発表されたばかりだった本屋大賞について説明してみたら、食いついてきまして。
その人はビジネス書は読むけどエンタメや文学賞ものは全然、という人だったので、「本を読むことに抵抗はないしフィクションに興味はあるけど、どれを選んでいいのか分からない、こういう人が本屋大賞の想定読者なのかな?」と思ったんです。
ガッツリ反応した上司は「帰りに本屋に行ってみる!」と言い残して去りました。ノリノリでした。
で、翌日私から聞いてみました。「面白そうな本ありましたか?」って。
返答。「いやー、きまやさん俺はダメだ!あれ分厚すぎるもん!」と言われました。
その年の1位が『天地明察』だったんです。
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確かに分厚いです…。
「あー、お好みに合いませんでしたか、すみません」と答えつつ、思ったのが、「じゃあ『神様のカルテ』買えばよかったのに」。
2位だった『神様のカルテ』はそこまで分厚くないし、読みやすいです。手に取れば分かると思ったんですが。
どうやら上司、1位しか眼中になかったようでした。順位がついてしまうとそうなってしまうんでしょうか?
「ノミネート作品なら全部おもしろいですよ」ということを伝えきれてなかったのは私の落ち度ですが…。
ノリノリで本屋に行って財布に手をかけていたのに、1位の作品が好みそうじゃないというだけで手を引っ込めてしまった、ということ。
これを思い出すと、こういうことが起こりうるという点では海堂さんの指摘もごもっともだなぁと思わざるをえません。
(1つのエピソードで答えを出してすみません。個人の経験から導き出したことなので、規模の小ささはご容赦ください)
結論的なものは出そうにないです
賞であるからには出版社の思惑が絡むのも当然だし、そうしたら作家さんたちは思う所あるだろうし、一般人にも色々な人がいて「◯◯賞」というのが好きな人もいれば大嫌いな人もいます。
私はとりあえず、注目されることが大事なんだから賞そのものはたくさんあればいい、と思う派です。だけどそこで「内容が伴った賞なのか?」と聞かれると頭を抱えます。
本屋大賞の開票は4月8日です。
ノミネート作品を1つも読んでいないという海堂さんの
本命『教場』、対抗『村上海賊の娘』、穴『聖なる怠け者の冒険』。それにこれまで候補作だけは多かった文藝春秋がいまだに無冠という点と、本屋大賞・神7である万城目さんというダブルメリットを勘案して『とっぴんぱらりの風太郎』を大穴にしました。このギャンブルの採点は、予想した四作中三作が上位三冊を占めたら、海堂の社会情報分析力の勝ち、ということでお願いします。
という予想とともに、注目して待ちたいと思います。
ちなみに私は『ランチのアッコちゃん』かな?と思ってます。出版社の思惑とかは関係なく、最近柚木さんの評判がいいので。
きまやでした。
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