きまやのきまま屋

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ノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロについて語らせてくれ

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カズオ・イシグロと出会ったのは 

何年生の時か忘れたけど二十歳前後に大学で入っていたゼミで、楽しく寺山修司や中原中也や三好達治を勉強していたのだけれど、そのゼミの飲み会で教授に「近現代日本文学を専攻してるのに実は最近ポール・オースターが好きすぎて気が狂いそう、本来なら日本以外ならヨーロッパ圏の文学が好きだったのにアイデンティティを見失いつつある」みたいな愚痴を言ったら、教授が私の目をじっと見て「それはそうと、きまやさんは多分カズオ・イシグロが好きになるから読みなさい」と言われて、『遠い山なみの光』を買った。

遠い山なみの光 (ハヤカワepi文庫)

遠い山なみの光 (ハヤカワepi文庫)

 

 

私の母親が長崎出身なこともあり身近に感じた。で、不思議と静かなオリエンタリズム。日本なのに日本じゃないような。イギリスから見た日本の昔。母と娘たち。内容は少し暗いんだけど、あの独自の雰囲気に魅力された。

 

それから順番に読んで行って、『日の名残り』で「ミステリじゃないのに信用できない語り手だ!」など打ち震えたり。

日の名残り (ハヤカワepi文庫)

日の名残り (ハヤカワepi文庫)

 

これを読んでいたら、父親が寄ってきて「映画のDVDあるよ」と貸してくれた。

日の名残り コレクターズ・エディション [SPE BEST] [DVD]

日の名残り コレクターズ・エディション [SPE BEST] [DVD]

 

アンソニー・ホプキンス。映像になるともっと分かりやすいんだけど、このおじさんの素直になれなさ!

 

自分の仕事にプライドを持っている、けれど仕事そのものが時代遅れになりそう、前の雇い主に忠誠を誓っていたのに時代が変わると彼すら悪者になる…いや、そもそも彼は正義の人だったのか?という葛藤。

父親との葛藤。

傍目から見たら妄想ギリギリの過去のロマンスを後生大事に抱え続け、老年になって言い訳しまくりながらやっと会いに行く。遅いよ。

で、仕事繋がりですら繋がれなくなっててでも彼女は満ち足りた人生を送ってるぽいから満足する。

新しい雇い主もきっと悪い人じゃないさ、馴染めればいいのさ、ってとにかく仕事に生きる。

そんな話。

 

ブッカー賞を意識し始めたのはここから。

 

つぎの『充ち足りたもの』は持ってるけど読んでなくて(なかなか分厚い)、『わたしたちが孤児だったころ』は親と回し読み。

わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫)

わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫)

 

『わたしを離さないで』はすごく具合の悪かった時期に読んで、でもちゃんと読めて、「このオチ『輝夜姫』と一緒じゃない?」と母親と話してた。

 

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

 

映画も見た。この女優さん可愛いし演技うまい。

 

わたしを離さないで (字幕版)

わたしを離さないで (字幕版)

 

最新作の『忘れられた巨人』は奇妙なファンタジー。老年にさしかかったイシグロさんより年上の父母のことを考えさせられる。

忘れられた巨人 (ハヤカワepi文庫)

忘れられた巨人 (ハヤカワepi文庫)

 

もうすぐ文庫になるらしい。

 

『忘れられた巨人』刊行後の夏に、NHKの白熱教室にカズオ・イシグロが出た回、大事に録画してる。完全版の方。

 

その中でカズオ・イシグロはフィクション…小説の意義を語っていた。なぜ歴史や科学みたいな真実の話を読まずに、作り物の話を読まずにいられないのか。

小説は何が特別なのか。

 

フィクションを書くことで自分の内なる世界を外に作り出す、と彼は言う。その中に来れば誰しも同じものを分かち合うことができるから。

舞台設定は自由だ、何でも書けるから迷い続ける。 

それが小説なのではないか、と。

小説の価値は表面にはなくて、設定はどこでも良くて、テーマだけが問われる。異なる世界にある作り物だからこそ、普遍的なものを提供するのだと。普遍的なものは、必ずしも現実ではなくていい。その方が遠くまで届く。 

小説を読むことでしか得られない体験があるのだから。

 

 

何年かに一回しか作品を出してくれないけど、いつも楽しみで親子で読める、そんな作家さん。

ちなみに私はカズオ・イシグロ作品なら、短編集である『夜想曲集』がけっこうダントツに好きです。 

夜想曲集: 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語 (ハヤカワepi文庫)

夜想曲集: 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語 (ハヤカワepi文庫)

 

 

ノーベル文学賞おめでとうございます!

 

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