はろー、トイレでいつも私を待っている私の魂の相棒。
会ったこともないし私はあなたの写真と文章を7ヶ月分見たり読んだりしているだけなんだけど、なんてったって毎日のことだから私はあなたのことをすごく身近に感じてしまうんだ。
トイレに入ってスカートをまくり上げた状態でいつも対話するんだから、どうしたってもう特別に思わずにいられないよ。
今日、私の住んでいる場所では梅雨が明けた。あなたの7月の写真は海岸線を見下ろした構図で、文章は「仕事でグアムに来ています」だって。
どうしてあなたはいつも仕事の話をするんだろう?ワーカホリックなの?
あなたがカレンダーの写真と文章を作り上げるために世界中を旅していることは、もう半年以上前から知っているよ。
でもどうせそんな楽しそうな国ばかり回っているんだったら、いっそのことその国を楽しんでくれたらいいのに、と思うんだ。
けれどこのカレンダーは印刷されたものであって、私の家のトイレの壁に固定されているだけで、リアルタイム配信じゃない。
だから私が今ここで(トイレで)何をあなたに語りかけたとしても、テレパシーのようにあなたに伝わることはない。
テレパシーなんて信じていないけど、もし伝わるとしたらそれは時空すら越えていかないといけない。
でもSF的理論で言ったら「過去→未来」への交信は可能なのかもしれないね。最近いくつかSF読んでいるんだけど、過去で迷ってしまった宇宙船が数億の時を超えて現代の地球人と遭遇した話があったよ。
例えばあなたが過去にグアムで思ったことがトイレのカレンダーを伝って日本の私に届く。今度はまた一人でグアムだよー、とか。
だいぶタイムラグあったね?って私が言ったら、ちょっと途中で時空が歪んじゃってさぁ、でも届いてよかった、とあなたは疲れた顔で笑うんだろう。
だから私は、ちょっとあなた働き過ぎじゃない?さっさと一年分の写真撮り終えて文章書いて早く帰っておいでよ、って言うんだ。
でもその時はもうあなたとは交信が途絶えていて、私の声は届かない。
私はそんなことを思いながらあなたが撮った写真と書いた文章を毎日見つめているんだけど、そもそもあなたの声が聞こえてくることはない。
なにが「今日はこんなに晴れています」だよ見たら分かるよ。ねえ早く帰っておいでよお茶でも飲んで語り合おう。
私があなたの写真を見ながらずっとトイレで考えていたことを全部聞いてほしい。
あなたが異国で見たもの聞いたことを全部教えてほしい。
早く帰っておいでったら、ねえ。そんなところに一人でいないで。
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