遅くなりましたがまとめていきます〜
2022年の下半期に読んだ冊数は108冊だったようです、煩悩と一緒!
いつも「私が読んだ」タイミングで集計していますが、今回はほとんど新刊。読了冊数というより、発刊時期を揃えました。
まずはフィクションから、女性作家の力作を三連発して、頭おかしい系の詰め詰めを並べて、ノンフィクションにいきたいと思います。途中で次点とか関連とかも並べていくのでチェックしてね~
- フィールダー
- コークスが燃えている
- 絞め殺しの樹
- テーゲベックのきれいな香り
- その他に好きだったもの
- 野原
- プリズン・サークル
- 傷を愛せるか
- タフラブ 絆を手放す生き方
- 家族
- 聞く技術、聞いてもらう技術
- オールアラウンドユー
フィールダー
この国に死刑があること、猫を室内で可愛がることの是非、尊敬している人に「尊敬しています」と伝えたら「じゃあヤレるな」って見下されるタイプのセクハラ、お前の『神の手』、子供達が愛されていないこと、その愛が歪むこと、知らない人とだけ文字でだけ話せる内容、関係へのいびつな依存、資格を得ないと参加させてもらえないヒエラルキー、裏道から入り込むために使う愛嬌、好きになってはいけない人、庇護すべき人、助けたい人と助けるエゴ、言葉が伝わらないこと、自己満足にしか言葉を使わない人、希薄になる関係、知られたくない場所、逃げたい場所、弱い人の前で強くなること、他人を思うこと、ゲームに感動しながらキレること、学校と親と。
盛りだくさんすぎた。
タイトルが地味だからか、話題になることが少なくない?
あらすじは、研究者が小児性愛の誤解を受けて出奔しつつ人生を顧みて、会社員がそれを追いつつゲームにハマっていて、お互いを「フィールダー」だと認め合う話でした。
ねえ、こういうあらすじなのにキーワードが多いのよ。
ゲームの描写もよかった!
とても問題作だと思うんだよなぁ……みんな読んで!!!…なんにせよ古谷田さんは実力派です。
コークスが燃えている
「女の人生全部乗せ」みたいな作風って、いいよね。
こちらに書きました!
櫻木みわを紹介したい。3作品とも良いよ、新刊出たよ、福岡出身の同世代女性!
新刊もとてもいいんだけど話題が人を選ぶかもなので、オススメするならコークスです。
特に福岡の筑豊出身の人に読んでほしい描写があります。でも、共感しながら読書をする人にはきついかも…。あと同世代の人には気にしてほしい一冊。
絞め殺しの樹
久しぶりに一気読みしました。そして人にオススメせずにはいられない。私は歴史ものをあまり好まないんですが、昭和史は面白く読めるのかも。
力強い。
こちらに書きました!
テーゲベックのきれいな香り
もともと詩を書いていた人(短歌も読んだことありました)の、小説デビュー作。これまた異質。
文章が好きすぎて引用します!
"直ちに
直ちに、直ちに、
底抜けの明るさ……、頬骨、ほおぼねなのか?"「1 わたしの愛犬パッシュのこと 2028.4」
"書くことは残すことですから。書くことで死なないのです。いや、書くことによって誠実に死なせることができるのです。"
「3 そしてわたしが消えてゆくまで 2002-2013」p81
"通奏低音が主題を引き受けて奏でるとき、東京を東京という記号で語る人たちがまた東京という主語で言う。わたしは東京。東京はわたし。"
「4 虎子、それはわたし 2013.4」p155
"会いたい人? もちろん。たくさんいますわ。でも、もし誰にでも会えるなら、わたしに会いたい。"「7 そして東京と混ざり合うまで」p242
山﨑さんの文章を読んでいると、音楽を聴いている時のことを思い出す。音楽が聴こえるのとは少し違くて、音楽を聴いていた時の耳の記憶、バンドのMVを見た時の視界の記憶が、脳に浮かび上がる感じ。真面目な読者なので、出てくる音楽もチェックしながら読み進めました。
石松佳さんはBGMがかかる感じなんだけど、山﨑さんはちょっと映像ちっくな雰囲気あるんですよね、これはなんなんでしょう?今思えば、昔からそう?詩集が舞台化されていたりするので、なにか舞踏っぽいみたいな印象はみんな思うのかもしれない。
あらすじ…というものはどれなんだろう。近未来の東京で、男性が過去を思い出している。女性が楽しく生きている。手紙がくる。短歌を書いたり、詩を書いたり、漫才をしたり、幼少期を思い出したり、自他があいまいになったり、テーゲベックの香りのことを考えたり、する。
読みながら酔っぱらった気分になったり、たまに思わず吹き出したりする不思議な読書体験でした。
東京の話なのでGEZANを思い出したよね。山﨑さんご本人はクラシックを好むらしい…?(こないだスペースでちらっと聞いた)でも、なんかお笑い好きそうよね。毎日新聞のインタビューもとても興味深かったです。2022/12/28付。
好きな詩集はこちら。ここから追ってるけど長編小説で小説家デビューしたので驚きました!この詩集は、ただただカッコいい。
冷やされた欲望が慰撫するでなく誠実な問いかけをする
p84
まさにそんな感じの文章。
その他に好きだったもの
フィクションの次点は、安定の金原ひとみ『デクリネゾン』! やー、ずっといいなあ金原さん。ずっといいよ。コロナ禍でもずっといいよね、すごいよね。
それと綿矢りさ『嫌いなら呼ぶなよ』は笑いました。最後のやつが好き。
新しめの人では、佐原ひかり『人間みたいに生きている』が良かったです。佐原さんのスペースを聞いたことがありますが、文学少女っぽくて素敵でした。私のTLで圧倒的な人気を集めています。
これは良いの分かる!生きにくい女子高生と、不死身の人間。YA風味で読みやすいけど、さっぱり読み終えることはできない。
今回、推し詩人以外ほとんど女性作家さんばかり挙げていますね…『音楽が鳴りやんだら』も好きでした。
海外を一つ。
野原
小さな町の墓地が舞台。出てくる人たちは、みんな死者。29人が独白をする、ちょっと変わった本。
あなたの人生では何が印象的だった?どこで自分は間違えたんだと思う?一番よかった瞬間は?最愛だったものは?
そんな問いかけをされたわけでもないのに、人は一生懸命に語る。それが良すぎる。
ゼーターラーはオーストリアの作家さん。俳優もしている?していた?そうです。前作『ある一生』も感動しましたよ。
ここからノンフィクション。
プリズン・サークル
ドキュメンタリー映画。㏌刑務所。の、文字版。
私は映画を先に観ました。たまにネットで観れたり、有志の団体が各地で上映していたりします!
これは個人的な話ですが、そして正しい方向性か疑問の残るところですが、被害者感情を拗らせたついでに加害者更生について考えることが多くて。2023年からはやめようと思っているのですが…。
私の人生にこの映画があって、良かったですよ。
この映画は、全人類が観た方がいいと思っています。免許証更新の時や成人式や、あらゆる場所で流していってほしいと思う。。。
傷を愛せるか
増補新版がちくま文庫から出たので、評判をきいて買ってみたら、とてもよかったです。
精神科医でカウンセラーでもある著者さんの、日常や旅先でのエッセイ。映画のことも。語り口がとても柔らかくかつ知性を感じられる文章で、とても好み。
「傷を愛せるか」と問いかけている本なのに、傷そのものを愛することを強要してこない文章たち。
一方で、傷があるからこそ癒される風景もある。折に触れて再読したい一冊です。
タフラブ 絆を手放す生き方
こちらもカウンセラーの、信田さよ子さんの新作。最近すごく信田さんが好きで!
依存とか関係とか…。副題「絆を手放す生き方」に引っかかりを覚えたら読んでみてほしいです。
タフラブとは、アルコール依存症などを見守る周囲の人に必要とされる愛の形らしい。大事なことよね。
エーリッヒ・フロム『愛するということ』が、名著なんだけどやっぱり昔すぎて少し古いじゃない?
代わりになるのはこれだと思う。
人との関わり方の本でいうと、『人間関係を半分降りる』もよかったです。
家族
村井理子さんを私はけっこう読んでいて、毎回ユーモラスに問題を切り取る手法が印象的なのですが、こちらは真正面から家族に向き合っています。『兄の終い』と併せて読むと、より奥行きを感じる一冊かと。
表現がきれいでした。
聞く技術、聞いてもらう技術
こちらは、東畑さんを読んでいるというより編集者さん読み(柴山さん)をしていて手に取った一冊。
東畑さんも何冊か読んでるけど、いつも読みやすくていいですよね。
同じ編集者さん(しーば!)だからか、少し『当事者は嘘をつく』と通じるところを感じました。
心にとって真の痛みは、世界に誰も自分のことをわかってくれる人がいないことです。P70
孤独こそが聞かれねばならないのですが、孤独を聞こうとすると、聞く人も孤独になります。そして孤独になると、人は聞くことができなくなります。P79
沁みること言うやん…と思いつつ読みました。経験に根付いた言葉は強いですね。
オールアラウンドユー
ベストヒットになった歌集です。よかった。木下龍也さん、情熱大陸に出ましたね。
予約したらランダムに選ばれる装丁、私はグレーでした!お気に入り書店さんから取り寄せたのでサイン本です!
著者撮影の、帯の写真が良い。全体的に装丁が素敵で、物質としての本としてかわいらしい。しかし中身もキレキレです。
神さまを殺してぼくの神さまにどうかあなたがなってください
良すぎてキーホルダーを買いました…。
ナナロク社さんはいつも楽しいことをしますね。舞城の詩集も出してくれてありがとう!
あっ、もう10冊越えた???
最後に、今期の「面白かった古典」は、まだ古典ってほどじゃないけど
です!はー、天才。関連記事です。
あとは元祖女の子が病気で亡くなる系。
名作でびっくりした。
それでは2023年も、楽しくのんびり読みましょう~
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