決まりました
滝口悠生『水平線』だって!決まるの早!(ていうか読んでない https://t.co/Rj05R2iSM1
— きまや (@kimaya4125) 2022年12月21日
滝口さんでした!
↓ ここから下は発表前に書いていた文章です。
ここ十年くらい、織田作之助賞がアツい。私はこれで、古谷田奈月さんを『リリース』から知りました。
大阪が関係しているとウケがいい、とかあったんでしたっけ。リニューアル以降は区別はなくなったんでしたっけ(とか言って去年は岸さん、でも本気で大阪のみ推しなら『リリアン』より前にくるでしょ、ということで今は関係ないと思っています)
なにはともあれ、今年のラインナップが強いので感激しています!
並べると、
- 今村 夏子「とんこつQ&A」
- 宇佐見 りん「くるまの娘」
- 河﨑 秋子「絞め殺しの樹」
- 高橋 弘希「音楽が鳴りやんだら」
- 滝口 悠生「水平線」
です。
最初にこのラインナップ見た時には、「『くるまの娘』が獲りそうだが今村さんも滝口さんもいるので難しいか~?」くらいの感想だったんですけど、
『水平線』以外の作品を読めた今となっては、激戦すぎる!との思いを強めています。趣味の方向によっては、あの『くるまの娘』がかすむぞ。
今村夏子『とんこつQ&A』
今村さんを追っているので、全作解説頑張っています。
『とんこつQ&A』は中編集、くらいの感じで4作。表題作は、タイトルのファニーさに惑わされているうちに、けっこう背筋の凍ることになる。
『こちらあみ子』のタイミングで声をかけた編集者さんが9年待たされた逸話もいいですが、こんなに全部うすら怖い話を書ける今村さんがやっぱりすごい。今、短編で今村さんに入るならダントツこれです。人情ホラー。だけどドロッとしない。
宇佐見りん『くるまの娘』
野間文芸新人賞ノミネート作。でも相手が強すぎて受賞ならず。町屋良平『ほんのこども』が獲ってました。
でも『かか』『推し、燃ゆ』から来て、『くるまの娘』はしっかり家族ものなんですよ。読後に放心するような突き詰め方をしていました。
書き方も上手でさ、その最中だと辛すぎて耐えられないかもしれない描写は時間をずらしていたり、あ~うまい~と思いました。何か獲るだろうと思っているけど何もないなら、それは賞が足りないだけなので、出版社のみなさんで誕生日プレゼントとかあげて宇佐見さんの存在を寿いでほしい。
「終わらない苦しみもある」。宇佐見りんが語る、『くるまの娘』で描いた「家族のかたち」 | CINRA
惜しむらくは、タイトルと中身の一致またはギャップ魅せが、今村さんに及ばないところだけ…。『くるまの娘』になって以降をもっと読みたかった!
河崎秋子『締め殺しの樹』
こちらを読了したのでこのエントリを書いています。びっくりしちゃって。久しぶりにノンストップで読み終えました。
ていうか前回の直木賞候補になってた時にタイトル怖いし重そうで避けた私の目は節穴でした。窪美澄を推していたので…。
北海道を舞台にした昭和史です。
第一部は、まるで「おしん」のような展開。身寄りがないため北海道の遠い親戚の家で過酷にこき使われる少女。屯田兵であったことを自慢にしている家族、みんな性格が悪い…
しかし目をかけてくれる人がいて、学校に行けるようになる。服も与えられるようになる。大婆さまは誇り高くて怖いけど尊敬できる。
家族以外の人の優しさで、勉強をする機会を与えられる。仕事しながら必死に勉強する。慰めは猫たち。遊郭?に売られそうなところを助けてもらって職を得る。成人する。虐待のようだった家の仕事から解放され自活を始める。遠くに呼び寄せてくれる人がいるが、地縁からは逃れられず流れでまた地元に帰り、結婚する。子が産まれる。けれど地縁がまた追いかけてきて悲劇がある。絶望の中、一人でコツコツと仕事をする、そんな女の人生。選択肢のない、過酷な人生。
第二部になると主人公が変わり、第一部の女が養子に出した少年の話。
母が虐め抜かれた家の跡取り息子として育てられるが、やはり環境は過酷。時代の流れと養父母の見栄から、北大を受験して合格し地元を四年間だけ離れる。けれど家業を継ぐために地元に帰らなければいけない。実母のことが分からないけど、煩悶するほどの縁もない。
そうかと思えば実姉を自殺に追いやったサイコパスに目をつけられ、北大入学効果で色々な引きがある。浅ましい血縁たち。落ちぶれつつある、継ぐ予定の家業。
それでも地元に帰る。選択肢はあるものの帰って、地縁の中で生きることを選ぶ。
さらっと?あらすじはこんな感じ。うちのめされる描写も多いが第二部の主人公は流されない。
タイトルの意味を噛み締めながら、逃げない道を選ぶ。その過程に引き込まれました。
冬に読むととても寒くていいと思います!
高橋弘希『音楽が鳴りやんだら』
あとで名前を出すけど、例えば滝口悠生が初期の『ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス』のサイドストーリーとしてこういうの書いていても不思議じゃないのでは?
純文学がバンドをしています。
私の頭のなかではけっこう漫画ちっくでもあったので、好きに脳内変換しながら読めるかと思います。
王道に狂気、でカルトっぽい描写があったり、クスリがあって展開は読めるんだけどちょっとドラゴンっぽくもあり。
力技すぎず、聞いたことのあるようなないような、今もどこかで起こっているような展開に、あれこれ浅野いにお?と戸惑いながら、ラストよくここまで持ってこれたなぁ。マスコミ発表にこんなに人情込められるもの???
すごいしっかり書いてあって王道から逃げずに狂っていて好感。
知らない作家さんだったけど好みでした。って、調べたらもう芥川賞獲っていました『送り火』は聞いたことがあります!2018年は忙しすぎて追えてなかったです!
滝口悠生『水平線』
すみませんこちら未読です…
今年は滝口さんを『ひとりになること 花をおくるよ』で読んで、だいぶ満足なんです。
あと、ちょっとパラっと読んでみた感じ『高架線』『茄子の輝き』を超えるのか不明&私は今このモードじゃない、と思ったので。。。
硫黄島と現代をつなぐ話だそうです。
でも評判いいよね。あのボリュームで、けっこうみんな読んでいらっしゃるので、Twitter文学賞で強そうです!
『ひとりになること 花をおくるよ』ってAmazonにないんですね。文フリで買えるらしい。私は、個人でされている本州の本屋さんからお取り寄せしました。
こんな感じで、発表を楽しみにしています!21日だからもう今日だ!
誰になっても私は嬉しい!!!
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