- 森があふれる 彩瀬まる
- 平場の月 朝倉かすみ
- あなたの愛人の名前は 島本理生
- 愛が嫌い 町屋良平
- 図書室 岸政彦
- ある一生 ローベルト・ゼーターラー
- 回復する人間 ハン・ガン
- 刑罰 シーラッハ
- 今日は誰にも愛されたかった 谷川俊太郎・岡野大嗣・木下龍也
2020年に入ってから佐々木中に手を出して青ざめているきまやです。なぜか。そういう巡り合わせだったからとしか言えないけど面白い体験でした。
2019年下半期の読了本は76冊でした。あら、上半期と同数。その中からなるべく新刊で、ベスト9冊を選んでいきます。
どこかの誰かの読書の参考になれたら嬉しいです!
上半期のオススメはこちら。
森があふれる 彩瀬まる
とてもよかったので書評を書きました。織田作之助賞は獲らなかったみたいなんですが、推していきたい。(窪さんが獲った)
私がずっと読みたかったのは、きっと、こういう話だったんだろうと思う。
たくさんの「どうして」を内包して緑だけが繁殖をやめない。作家VS描かれる対象、でもあり、フェミっぽい流れで紹介されてもおかしくないと思うんですが、いかがでしょう。
平場の月 朝倉かすみ
これ、刊行は2018年末でしたね!
大人の恋愛もの、上半期は絲山秋子に泣き、下半期は朝倉かすみに泣きました。
第32回山本周五郎賞を獲っています。映画化もされるとか。
50代の恋愛なんですけど、これがね、地味かつ沁みる。
話の構成が素晴らしかったし、日常を生きるとは、と考えを改めさせられる一冊でした。そして私はやっぱり、結婚はしておいた方がいいと思いました、好き同士なら法律を。
朝倉かすみ 『平場の月』 特設サイト | 文芸図書編集部 | 光文社
あれ、『平場の月』も映画化?
本日(12/17)の読売新聞で、『平場の月』(#朝倉かすみ)https://t.co/SAzy9ad73Y のカラー全5段広告を出しています! pic.twitter.com/xjkQapSJ5o
— 光文社 書籍販売部 (@kobunsha_cs) 2019年12月17日
あなたの愛人の名前は 島本理生
これも刊行は2018年末。もう新刊も出ています。が、これがよかったんですよ。
島本理生が本気で刺しに来たら、こうなるの。
連作短編集の形をとっていて、何が何でも、どこかの誰かを何らかの角度から絶対に一筋、スッと刺してやろうって(もちろん比喩です)、そんな気概を感じた。
同世代女性におすすめしたい、けど読まない方が平和かもしれない、私は好きだぞ、そんな作品。
ラストはちょっと救われていてよかった。
愛が嫌い 町屋良平
町屋良平を読みまくった一年だったね…。デビュー作から読み返していました。文庫になったし。
デビュー作『青が破れる』って私はピンとこないんだけど、それを見逃さない選考委員、藤沢周・保坂和志・町田康。ありがとうございます。
そして文庫には!
尾崎世界観との対談『表現者は動き続ける』が載ってます。これはみんなに読んでほしい。世界観がいいぞ。
さて、2019年にたくさん読んだ中でも、これが一番好きでした。
中編が3つ収録されています。「しずけさ」「愛が嫌い」「生きるからだ」。
ちょっと世間からはみ出している大人や子供の話。
町屋良平って、終わり方が独特じゃない?別にラストに向かって加速しないのに、最後、ふわって放り出されるでしょう、天に向かって。
そこがとても好きだと思う。
葉にしたたる滴がひかりを反射すると、川がごうごうながれ、かれは、なにかを閃いた。(中略)五歩でその天啓を忘れ、忘れたあとに、このままで生きていこう、とかれはおもった。とくにインスピレーションの要らない人生だった。なにかを表現したらたちまち暴力になってしまうのでかれはこわい。
「生きるからだ」p251
図書室 岸政彦
表紙の写真と題字が岸さん本人作であることに、まずぐっときますね。
表題作「図書室」と「給水塔」の二編が収録されています。
「図書室」は、小学生の女の子が主人公。関西弁がここちよく、図書室で仲良くなった男の子との掛け合いがおもしろいです。
それが意外な方向に進み、ある年の大晦日にちょっとした冒険が始まります。
「給水塔」は、岸さんの自伝的要素があるのかな。何回か読んだら、これこそが私の中の「大阪」になりそうです。
ここから海外文学!
ある一生 ローベルト・ゼーターラー
困ったらクレストブックスを読もう。薄くても濃い。
20世紀の、一人の男の人生です。働いたり、得たり、無くしたり、人生のすべて。
セリフが少ないんですけど、風景描写がとてもきれいでスラスラ読めます。
最後だいたい花が咲いているのが、とても好き。
回復する人間 ハン・ガン
あのね。
これ読んで、ちょっと回復した。
ありがとう。
回復って、取り戻すことなのかもしれない、と私は思いました。
刑罰 シーラッハ
シーラッハの『犯罪』シリーズ、最新作は『刑罰』でした。12篇入っています。訳は、お馴染みの酒寄先生です。
「おれは物乞いじゃない。ウサギ小屋を持っていてね。四匹飼っている。毛並みがふわふわなんだよ。毎日、野菜を与えている。金なんていらない。なにもかも静かに話せる相手がほしいんだ。自分ではもうなにも理解できない」
『刑罰』p196「テニス」
犯罪に巻き込まれた人々は大抵、なにをどうしていいか分からなくて、誰を憎めば報われるのかも、明日をどうすれば救われるのかも、なにもわからない。
大事な誰かが滑稽な死に方をしたり、残虐な殺され方をしたりしながら、残された人たちはそれでも、死ぬこともできないで、刑罰と向き合う。
そんな短編集。悲惨さと日常は紙一重でした。
最後に詩集・歌集を。
今日は誰にも愛されたかった 谷川俊太郎・岡野大嗣・木下龍也
谷川俊太郎が好きなんですよ!
【参考記事】
そして、歌人ではこの2人が好きです。
そんな3人の「連詩」が前半にあり、そのあとになんと「感想戦」があります。
何をどう思って書いたのか、何に気をつけたのか、どこに引きずられそうになったのか、など創作秘話がてんこもりでした。こんな詩集ってある?
3人はとても仲良しそうでしたよ。
さて、2020年オリンピックイヤーも、楽しく読んで生きましょうね。
※番外編
新年早々いいものを読んで泣いていました。
若松英輔『悲しみの秘義』読了。悲しみと慈しみ、書くことと読むことについてさまざまに26のエッセイ。これとてもよかった!『見えないが存在する、そうしたものが、私たちの人生を底から支えているらしい。(p23)』
— きまや (@kimaya4125) 2020年1月10日
- 作者:若松 英輔
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2019/12/05
- メディア: 文庫
【これまでのオススメ本】