上半期の読了は117冊でした!もりもり読みましたね。
まずはフィクション、国内から。
スモールワールズ
本屋大賞3位の短編集。この作者さん、なんだか違うジャンルで有名だった人らしくて、一部界隈がけっこう騒然としていましたね。
…本屋大賞なので、まあ、そっち系だよね…という、あさはかな予想を裏切る…なんていうんだろう、深い読み応え。思いもよらないあれこれ。
連作短編集になっているんですが、そのつなぎが自然というか、繋がってなくてもいいんだけど、気づくとすごく嬉しい感じ。
色々な社会問題の端っこで、みんなそれぞれ生きてるんだなぁと思える6編。どれもよかったし、どれもちょっとヒヤッとしたり。
キャラの濃いお姉さんもよかったし、戸惑う父もよかった。みんな複雑に生きてんだよ。どれも良すぎて頭が沸くかと思いました。ミステリ好きな人にもいいかも。
個人的に衝撃だったんですが、「花うた」という短編が『プリズン・サークル』を下敷きにしていました。被害と加害を一緒に考えようの試みが、往復書簡で。往復書簡好きすぎてよだれが出そうでした。
それでいてアルジャーノンでもあって、、、泣きました。
ミーツ・ザ・ワールド
金原ひとみさんを挙げるの初めてかも?実は9割くらいは読んでいます。デビュー作から読んでいて、もう20年とかですよね。それでびっくりしたんですよ、「ミーツ・ザ・ワールド」に。
今までと違うやん。
今までは金原さん側だった女性が、対岸にいる!ってなります。けだるげないつもの彼女たちが、遠いんです。
じゃあこちら側に誰がいるのか?ですけど、腐女子がいます。
「焼き肉を擬人化したアイドルグループ」という、なんともコア…?想像をしにくいのだが…?に人生をささげているOLが主人公なんですよ。焼き肉で推しカプを語られて、歌舞伎町ホストじゃなくてもびっくりしちゃうよね。
ほら、今までと違うでしょ。びっくりするから読んでみて。ちょっとシニカルでも楽天的でよかった。
煽りは【死にたいキャバ嬢×推したい腐女子】!!!
関連記事:金原ひとみ『ミーツ・ザ・ワールド』刊行記念インタビュー「真逆の二人がぶつかった先に生まれる、新たな愛の形」 | 集英社 文芸ステーション
我が友、スミス
読んでいて一番笑ったのがこれかもしれない、と思って挙げました。初めて読んだ人でした。
!筋トレ文学!です。
細かいところの描写が、思わず笑ってしまう脱力とノリツッコミで楽しい。義理の妹(予定)と一緒の場面とか、完璧でしたね。
ボディビル大会の舞台袖で悟りを開いた時は笑いました。いや、笑いごとではないんですけど。
これはサクッと読めて笑えるしほんと好き。筋トレ勢じゃなくても読んで。
現代生活独習ノート
さて、毎回津村さんを挙げている気がしてきた。今回もエクセレントな短編集でしたよ!
一人暮らしもいいし、習い事もいいし、TVにも物語があるよね、、、と、パッと明るいわけではないけどじんわりと発光している、私だけの人生。わかる。わかるよ。暮らしを大事にする津村さん。
『ディス・イズ・ザ・デイ』が最近、文庫化されましたが、あれからサッカー要素を抜いた雰囲気もあるかも。『ワーカーズ・ダイジェスト』を少し丸くした感じ。『サキの忘れもの』を、独身女性に寄せた感じ。伝わる?
【関連記事】
皆のあらばしり
乗代さんはもう、良すぎるでしょ。ラストどんでん返しする?この流れで?
男子高校生の知的探求心と、親戚に一人くらいいそうなフラッとしている博識なおじさん。
【関連記事】
日本文学は次点で
- 絲山秋子『まっとうな生活』…『逃亡くそたわけ』の続編!人間関係についていろいろ、夢が叶ったり富山で再会したり。
- 朝倉かすみ『にぎやかな落日』…ほのぼの老後。こういうふうに生きて死にたい。
- 上田岳弘『引力の欠落』…あいかわらず、というか増しておかしい。塔で限界を感じたら地面を掘るのは正しいかもしれない!
- 中村文則『カード師』…文章がうますぎるんよ、ギャンブル楽しそうすぎるのよ。
などでした!このあたりはもう、ずっと追ってて選びきれない。
ここから海外文学。
夜の少年
帯が重松清なことにびっくりしました。そっち系じゃない気がしています。
父と息子の重めの家族モノではあるけれど、犯罪小説でもあり、語りミステリっぽい雰囲気もありました。でも純文学かな?
僕の狂ったフェミ彼女
こちらの帯は、人選いかにも!という感じ。韓国文学のここ数年フェミニズムが熱い感じが、ちょうどよくエンタメになっていました。
「元カノがフェミニストに”なってしまった”」なんて聞くと、それはあなたが悪いことをしたのでは…?と思ってしまう私ですが、韓国のリアルってこんな感じなのかなと思うと、日本とそんなに変わらなくてみんな苦労しているんだなぁ、と思います。
海外文学は次点でミステリ2つ、
読書セラピスト (海外文学セレクション)…文章がいい。主人公がはっきりしない性格なのか、ダラダラ回顧していて流れは悪いところもあり。文章はいい。
自由研究には向かない殺人 (創元推理文庫)…『読書セラピスト』と反対に、主人公の歯切れがいい。現代っ子がITを駆使して町の数年前の難事件を解決する爽快感。高校生の青春モノなので夏におすすめしたい、けど、犬がつらい目に遭うので。。。
ここからノンフィクション。濃いです。
言葉を失ったあとで
上間さんと信田先生です。尊敬します。。。ふせん100枚くらい貼りながら読みました。
上述の『プリズン・サークル』についても詳しく出てきます。
ちょっとこれは説明ができないので…Amazonのレビューを読んできてください…。
殴った人は説明すべきだと思う。(P49)
あらゆる差別というものは、それらを見ないようにしたほうが平和だったということかもしれません。(P236)
「自己肯定感という言葉はね、私は使わないんですよ。自分で自分を肯定するとか自分で自分を好きになるとか、それは無理じゃないでしょうか。別の言葉で言えますか」(P253)
信田さんの引用ばかりになりましたが、『海をあげる』の上間さんだから聞き出せた詳細もあると思える対談です。はー、読み返そう。
100枚も貼ってないかな?キリがないんですよ!
副読本として
を挙げたいところ。この4年間、私はこの本を待っていたのだと思う。これだけが読みたかったのかもしれない。
私の弱さの源泉はどこにあるのか。自分が弱いのであれば、とことんウィークポイントを探していけばいい。弱くて死にかけている自分は何を言いたいのか。「私の話を信じてほしい」たった、それだけだった。(p193)
往復書簡 ひとりになること 花をおくるよ
こちらAmazonにない、文フリでご本人たちが手売りしていたり、オンラインで買えたりするタイプです。
え、滝口悠生が文フリでそこにいるの?すごい。
また、私はこの5月以降、植本一子さん関連の本を9冊くらい読みました。めっちゃハマってました。それでいて、この『ひとりになること~』が一番、植本さんの肝が据わってて、もういっそ爽快。
もちろんたくさんの厄介ごとに悩んでらっしゃるんですけど、なんか今までと違う感じがあります。それは多分、滝口さんに触発されている部分も大きいのではないでしょうか。
2通目にして「この往復書簡、出版しよう」と言い出す植本さんの、文章の価値に対する審美眼がすばらしくて勝手に感動しました。というくらい、滝口さんがかっとばしているので!
ご本人からBASEで買うこともできます。
ノンフィクションの次点は
利他の本は去年も読みましたね。中島さんがこの分野の第一人者、という認識でいいのかな?
視点の話が面白かったんですが、説明できるほど理解していないかも。「やってきて、とどまる」といヤツです。悲しみがやってきて私にとどまっている。
他にも
こちらもよかった。
あと、堀元見さんの2冊がおもしろかったです。『教養(インテリ)悪口本』と、『ビジネス書ベストセラーを100冊読んで分かった成功の黄金律』、どちらも真面目にふざけていて楽しい。
さて、ざっとご紹介しましたが、気になるものがあればぜひ。今回、笑えるものが多かったかも?
下半期も吐くほど読みましょう!
【過去記事】