きまやのきまま屋

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彩瀬まる『桜の下で待っている』を春に読んだらいいと思う

春ですね、そちらでは桜は咲いていますか。こちらはまだ満開の手前です。今からいっぱい咲くぞ!という勢いがあって、ちょうどいい頃かもしれません。


この時期にぴったりな一冊を紹介しますよ。

彩瀬まる『桜の下で待っている』

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それぞれが北へ向かう5編の連作短編集、『桜の下で待っている』。きまやイチオシ作家の彩瀬まるさんです。 

 

テーマは、ふるさと。隠れテーマは人との繋がりと、花。

縁があろうがなかろうがその土地をふるさとに変えてしまうのは人との繋がりなんだろうと思う、良くも悪くも。

この「良くも悪くも」というのがクセモノで、ふるさとが変わりなく存在するからって問答無用で良いわけはなく、ふるさとが無いからって完全に一人で生きていけるわけでもないのだ、ということを描く。

 

19歳の大学生が思う

握りしめて、怯えながら、高くて長い橋を行く。

p45「モッコウバラのワンピース」

も、

彼氏の実家に挨拶に行くアラサーフリーランスが感じる

どんな答えでも構わない、一緒に考える。

p93「からたち香る」 

も、

母親の法事で居心地の悪い思いをする末っ子の思い出す

大事にするのが億劫だった。

p129「菜の花の家」

も、

初めて死を身近に感じて怯えているのにうまく言えない小学生の見た

安心で、嬉しいことばかりで、きれいで、遠くに光っているお花の中

p176「ハクモクレンが砕けるとき」 

も、

両親が不仲だったせいで故郷がないと感じている新幹線乗務員の感じた

焚き火の色だ。遠くに人がいると教えてくれる色だ。私は、誰かに会いたかったのだろうか。

p228「桜の下で待っている」

も、

どれもこれも、結局は一人で生きていくんだけど決して本当の意味で一人ではない感じ。

親とか親戚とか温かいのにトゲトゲしくて近すぎるのに触れないものがね、あってもなくてもね、それを飾りながら花は咲いて散るんだよ。

 

タイトルに入っている花の印象を残しつつ、東北を旅して、最後は自分の家に戻る…といった流れが一本確実にストーリーを貫いているので、繊細さや心許なさを感じ(そしてたまに思い出して嫌になったり憤ったりし)ながらも安心できる、バランスの優れた短編集。

旅情をかきたてられつつ読んで、良い読後感だと思います。

 

彩瀬まる入門にぴったりだし今の時期にこれまたぴったりなので、ぜひぜひオススメです。

 

文庫になったんだよ

『桜の下で待っている』 文庫と単行本

文庫も買っちゃった!

文庫の帯に隠れていたのは、作中に出てくる花巻のデパートの食堂名物ソフトクリーム。高さ25センチらしいよ。

 

これ、単行本では後ろにあったんですけど、文庫化に伴って表紙に来ました。バランス可愛い。

 

 

文庫化に際して、作者さんはこのように言ってます。

また、解説は滝井朝世さん。文庫化の時に解説を好きな人が書いてたら買っちゃうよね!

 

桜の下で待っている (実業之日本社文庫)

桜の下で待っている (実業之日本社文庫)

 

 

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