きまやのきまま屋

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2021上半期に読んだ中からベスト10冊ともう1冊

 

遅くなりましたが、上半期の読書まとめ記事です! 

上半期の読了は108冊だったけど、再読が多かったかも。歌集も多いので、冊数は増えましたね!

『アウアエイジ』をこの期間に2回読んだのはノーカンで、一年以上前に読んだ本の再読はカウントしてる。

 

それでは振り返り解説。「読んだ中から」なので数年前の本も入ってます。

フィクションからいってみよう。

唯一の海外文学『断絶』

藤井光さんという翻訳家の方が好きです。私はダニエル・アラルコンの2作がフェイバリットですが、『紙の民』や『タイガーズ・ワイフ』などの方が有名でしょうか?クレストブックスでよく見る系。

 

マジで日本語が美しいので、藤井光さんオススメです。私と同い年。

 

で、その藤井光さんが新作を訳しているぞー!ってことで手に取ったのが『断絶』。

タイムリーな疫病パンデミックでした。そしてゾンビ!

感傷ゾンビ!!

NYゾンビパンデミック文学、現実の方がだいぶマシかも、と思えて慰められました。 

 

パンデミックの関連記事:

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ではここから日本文学。

百年と一日 

百年と一日

百年と一日

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第1回(2020年)つぶやき文学賞 で国内篇の一位になっていたこちら。よかったです、良かった…。

タイトル『百年と一日』なんですが、短編集。

正直、とりとめのない感じの短編が脈絡なく並んでいて、目次で萌えます。目次こんなふうにするとか天才です。

 

ストーリーがどうこう、というものではなく、時間の概念がふっとびそうになります。藤原無雨『水と礫』をギュッと短くして柔らかくなったものがたくさん並んでいる感じです。

変わったり続いたりするものってあるよね、と遠くに昔に未来に思いを馳せてしまいます。 

つまらない住宅地のすべての家 

津村さんの新刊もよかった。王様のブランチで軽めにネタバレをされたけど、そんなことより文章描写サイコー!という感じです。

 

とある住宅街の路地、つきあたりまでの道の両側に住む、さまざまな人たち。

路地の群像。色々な人が住んでますよね住宅地って!

このまま犯罪に転ぶのか?転ばないのか?手に汗握る箇所がいくつか。(自然に「いくつか」あるのです、すごい) 

『ディス・イズ・ザ・デイ』からサッカー要素を取っただけのような味わい。

 

津村記久子の関連記事:

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夏物語 

川上未映子が、女の人生を一作品に全部盛りしてきた、辛い。

 

これを一気に書き表したいからこその『乳と卵』までの原点回帰だったんだろうと思います。最初の方は『乳と卵』そのままなので、かなり懐かしいです。

ただね…選ばずにはいられなかったけど、ラスト納得できないぞ私は!

 

さて、良いとか悪いとかはないですがやはり、みえたんは女版・村上春樹を目指すようですね。

似たようなこと書いてることあるし、さもありなん。仲良しっぽくて対談もノッてたし。昔からファンだったそうで。

その立ち位置を確保できる(そして積極的にしようとする)人は意外にいないと思うし、二人とも関西出身だし、まあその人に着いて行けば間違いはないしね…。

 

それが「面白い」かどうかはさておき、とは思う。私はあべちゃん推し。もしくは宮本さん。

選んでおいていまいち褒めきれない、私のこの鬱屈を感じてほしい。

旅する練習

今回、選ばせてもらった中で、日本文学で唯一の男性作家さん。

Twitter見ていたらこれが芥川賞獲っていないなんて信じられない(『推し、燃ゆ』が獲ったので…)。

あまりによかったので過去作も全部読みました。まとめて書いちゃった解説はこちら。これからも推します!

 

乗代雄介の関連記事: 

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草原のサーカス

みなさんご存知のとおり、私は彩瀬まる、前からとても好きなんですが、『森があふれる』もずば抜けてよかったんですが、個人的な好みとしてこちら、今までのナンバーワンかもしれない。

姉妹モノであり、企業モノ…働くことの話でもあり。仲良すぎず悪すぎず、似ていない二人。それぞれに着実に成功していく。しかし二人はどちらも間違えてしまい、それぞれに盛大に転落する。

 

罪を犯した姉が、留置所で痛切に思う、

視野を広く保たなければいけない。(P168) 

に心打たれてしまった。企業を相手にするときに、個人はあまりに無力で、それでも対抗できるとしたら自分の思考と冷静さしかないのだ。

そして、奔放だった妹は

正しさでなにかを選ぶのはだめなのかもしれない。(P181) 

と考える。人としての弱さを持ち、クリエイティブすぎて現世に馴染めないのに「相応の」「割り切った」振る舞いを強制(期待)されてしまう圧力に、それでも負けないとしたら自分の基準で何かを選ぶしかないのだ。

 

彩瀬まるの関連記事: 

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では、ここからノンフィクション!

校正のこころ 

以前、けいろーさんの記事

『校正のこころ』とは?正解のない“言葉”の世界を校正者の目線で考える - ぐるりみち。

を読んで以来、気になっていたけど紙の本が手に入らない状態でがっかり…。していましたが。

ありがとう復刊!

しかも増補改定!!

イベントも拝聴しました。3週連続! 

お話し相手の牟田さんのことも、ちょっと前から好きで追ってます。

 

実はこれから校正の仕事がしたいと思っていて、ご依頼いただいたりもしていて、タイムリーに読めて感無量でした。

現実のクリストファー・ロビン 瀬戸夏子ノート

瀬戸夏子が好きすぎる。

 

ちょっと私、ほんとに瀬戸夏子が好きすぎるんだけど…。

歌人て、かつ評論する人、という感じでしょうか。書くことがいちいち好き。少し歳下。Twitterにいない。

※記事を書いていた頃は見つけてませんでしたが、ツイキャス&スペース用のTwitterアカウントをお持ちでした、瀬戸夏子さん。

 

瀬戸夏子の参考記事:

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海をあげる

私のTwitterタイムラインで、3人くらいが「2020年のベスト」として挙げてらっしゃった『海をあげる』。そんなに言われたら手を伸ばしてしまう。

最近6刷いったそうです!

沖縄についてのエッセイ。沖縄在住の研究者さんが聞き取り調査をされていて、その顚末。その研究者さんの聞く姿勢が素晴らしいから、ほろほろと、繊細な話が零れ落ちてくる。

そこに住んでいない私たちが知ることができない、知ろうともしない問題たち。私たちはそれを見守ることしかできない……本当に?

 

ラスト、戦慄しました。 

針葉樹林

針葉樹林

針葉樹林

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知らないで手に取ったけど福岡の人らしいし、知り合いの知り合いっぽいし、Twitterでよくエゴサしてらっしゃるし、何を書くにも気まずいのであまり書いてないけど、よい詩集でした。こっそり布教しています。

 

なんだかすごい賞を獲っていたので、分かる!と思いました。何かで評されないと駄目だ!と思ってしまうレベル。

そして、 

入れ忘れた『Lilith』

Lilith

Lilith

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あっ、書肆侃侃房だ! 

古語で短歌でジェンダーをやる。素敵でした。心酔。

夜の庭に茉莉花、とほき海に泡 ひとはひとりで溺れゆくもの

 

幻獣のかたちを都市にさらしつつわが呼ぶまではそこに在れ、雲 

 

短歌の関連記事:

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ちなみに、『風にあたる』拾遺も購入しました。まだ終わりまで読めてない、というかもったいないのでゆっくり読んでます。

風にあたる拾遺 2010-2019 - 凧の糸 - BOOTH

でもこれ、ajiroで買えるのかも(在庫がまだあるかは分からないですが、入荷はしてました)

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さて、いろいろと大変な時期が続くかと思いますが、2021年下半期もせっせと読んで生きましょう! 

 

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