2016年下半期の読書を振り返る
2016年上半期のオススメはこちら→2016上半期に読んだ本からオススメ12冊をご紹介! - きまやのきまま屋
2016年下半期は仕事を頑張って、趣味の読書ははかどらず!それでも70冊は読みました。あぁ上半期は113冊読めてたのに、忙しすぎた後半。
できるだけ新刊から、オススメを挙げてみます!
国内文学
李龍徳『報われない人間は永遠に報われない』
暗い、タイトルひどい、でもそれがクール。
特に取り柄がない男女が、変なきっかけで執着しあって付き合ってから別れるまで。
読んでいる間は、全然ぱっとしない恋愛だなぁと思う。けど、よくありそうだなぁとも思う。そしてそれを男の方は自覚している、それでいて手放すことになる、どうにもならないしどうする気もない。なにこれクール。
それでも後から思い返したらこれが最高の恋愛だったりもするのね?だよなぁ……という、なんだ結局は「小確幸」を大事に生きないといけないのねでもそれを手放すのも一興よね、と、まとまらない感想でした。好き。若い人はこれを読んでぜひあっけにとられてください!
宮内悠介『スペース金融道』
宇宙を舞台にした金融屋の、いくつかのエピソード。宮内さんだから当たり前かもしれないけどぶっ飛んでます。
主人公たちからお金を借りるのはアンドロイドとか、よく分からない生命体とか。取り立てに行くのは洞窟や宇宙空間。取り立て方法も尋常じゃない!
個人的には、カジノとナノマシンの暴走の話が好きでした。近未来SFとしての設定も凝っていて読み応えあり!主人公の相方の過去が注目ポイント。
SFという観点でいうと、次点で清水杜氏彦『うそつき、うそつき』も好きでした。首輪が義務付けられた人類の、近未来ディストピア!
相沢沙呼『小説の神様』
ラノベに親しみがある人にはこれを勧めたい、相沢沙呼ってこういうノリの文章も書くんだっけ?と意外に思った一冊。でも学園モノはお得意だし違和感なし。
こういう話を作家さんが書いているというだけでも、メタっぽくて面白い。シリーズ物についての話とか、実体験ですか…って切なくなりますね。 『午前零時のサンドリヨン』のことかしら、と。
女の子が可愛くてかっこよくてなんでもできて、それだけだったら嫌な感じだけど、主人公がメタ視点を入れてきたり嫌な感じの世相を反映している点があったりで、エンタメとして完成度が高いと思います。前半と後半で雰囲気が変わってくるのも奥深い。
あと、この流れだったら意地悪しようとすれば二人ぐらい殺せた。そうした方がベストセラーになったのかもしれない。でも相沢沙呼だから、大丈夫。
外国文学
傷だらけのカミーユ
最初から文庫で出してくれる、優しいルメートル。『その女アレックス (文春文庫)』がバカ売れしたのが記憶に新しいですが、その続きです!
あー、カミーユまじ傷だらけ。カミーユたんまじドンマイ。どうかいつか彼にいいことがあってほしい。
続きモノなのと話の流れ的に、第一作の『悲しみのイレーヌ』を読んでからじゃないと、細かな因縁が分からないので注意。逆に読み飛ばしていても大丈夫なのが、アレックスの方。
時系列でいうとイレーヌ→アレックス→カミーユです!
ハロルド・フライの思いもよらない巡礼の旅
これはちょっと古いんだけど、文庫が出たのは今年だから!
かつて恩義があったけど音信不通になっていた女友達の不治の病を知らされて、心乱れたままお見舞いに行くハロルド・フライ。ただポストまで行って手紙を出そうとしただけなのに、なんかそのまま歩いて行っちゃう。ちょっと乱心すぎるおじいちゃん。でもそれには理由があって…。
ハロルドけっこうなお年寄り。それでもただ、歩き続ける。でも病院すごく遠い。途中で有名人になっちゃう。テレビとか来て、伝導者的な扱いを受けちゃう。でも、ハロルドはただ友人のお見舞をしたいだけ。
そういう「世間とのズレ」という面でも面白かったし、円熟夫婦の危機モノとしても読めます。 じんわりとロードムービーのような後味。
生か、死か
翌日に釈放される予定の受刑者が、なぜか脱走?!というところから話が始まります。
どうしてあと一日待てなかったのか、危険を犯してまでなぜその日に逃げなけばいけなかったのか、サスペンスちっくでありながら、主人公の心情描写が生き生きしていて思い出す情景がとても美しい。 過去に縛られている、けどそれが幸せなら脱走でもなんでもすればいい。それほどに美しいものを覚えていられるのなら。
後半が怒涛の展開でした。しかし子どもの方はびっくりだよな、と。
コミックエッセイ
さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ
あまりにTwitterで評判がよかったので、kindle版をポチってしまいました。
結果、とてもよかった。
タイトルこんなんだけど特にそこまでエロではなくて、自立とかメンヘラとか親との関係とか、自分は何に苦しめられているのか自分が本当にしたいことは何か、などを必死で考える著者さんに、とっても共感。
(カズレーザーさんもテレビで褒めていたらしいです)
この続きを兼ねている連載が始まっていて、その名も『一人交換日記』!年末に単行本になっています。こちら私はだいたいをネットで読みましたが、こっちまで読んだ方が色々と腑に落ちます。特に母親のことが気になる人は、こちらも必読。
ノンフィクション
〆切本
- 作者: 夏目漱石,江戸川乱歩,星新一,村上春樹,藤子不二雄?,野坂昭如など全90人
- 出版社/メーカー: 左右社
- 発売日: 2016/08/30
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログ (8件) を見る
文豪たちの、〆切に関するエッセイや友達・編集者に宛てた手紙など。幅広く作家さんが勢揃い。一番新しい人は西加奈子?この話は、他のエッセイで読んだことがあったけど。
田山花袋がしょっぱなからグダグダで笑えました!
そして個人的に印象に残ったのが、短いけど幸田文と三浦綾子。更には、〆切を守っちゃう系の小心な作家さんたちのエッセイもあって私はこっちの方に心情が近いかも。小心者なんです…。
アメトーーク読書芸人に一瞬だけ登場してましたね。面白そう!って手に取ったの誰だっけ。あのみなさん、収録の後これ買ったかな?
くよくよマネジメント
30代前半時点の津村さんが、好きなだけくよくよなさっています。くよくよしよう、嫌なことからは全力で逃げよう、というメッセージを受け取りました。逆啓発本。ゆるーく生きたい人向け。
特に印象に残っている箇所。
「自分は他人に何でも言っていい、と思っている人が、世の中には一定数います。(中略)困るのは、相手の悪いところを指摘したり、否定して変われと言うことを、一つの踏み込んだフランクなコミュニケーションととらえているところです」p138
よし、ダッシュで逃げろ!!
脳が壊れた
41歳で右脳に脳梗塞を発症した作者さん。『最貧困女子』『奪取~「振り込め詐欺」10年史』などで有名な、ルポライター作家さんです。
場所が右脳っていうところが、読み応えのあるところ。右脳が調子が悪いと、高次脳機能障害が出るんですね。それが彼が今までに取材した貧困層の若者とカブり、思い返してみたあれこれが心に迫ります。彼らは貧困で悩んでいたのではなく、ADHDで苦しんでいたんじゃないか……?それを見過ごされているのではないか……? と。
後半は主に家族の話。奥さまがなかなか強烈な過去を持つキャラクターなんですが、支え合って生きてきたこと、支えきれていなかった点、今になって分かることが満載。
奥さまが書いた文章が、とってもよかった。
2016年の新刊から、下半期に読んだ本をまとめてみました。
どこかの誰かの、今年の読書の参考になれれば嬉しいです^^
【今までの読書記録】