2018年上半期の読了本
1~6月の間に読んだ本は、66冊でした!
全体数が少ないので、がんばってベスト10にしました。絞った…!
ノンフィクション3冊、フィクション7冊です。なるべく新しめと思って選んだので、2017~2018年に刊行されたものが多くなりました。
アクロバティックな情緒が大好きです。
ヘンテコノミクス
しょっぱなから漫画ですみませんが、これとても興味深く読みました!
ピタゴラスイッチの監修をしていることで有名な元電通のなんかすごい人・東京芸術大学の教授・佐藤雅彦さんが、行動経済学について何かを書いたらしい、ということで気になっていた一冊。
本屋で見つけたのでぱらぱらとめくってみて……おもしろそう!となったのでお買い上げ。
漫画のセンスが昭和っぽくてほのぼのするけど、のんびりと読んでいたら途中で「えっ?!」となる仕掛けが多数。
で、「そうか、その行動(現象)には名前がついていたのね!」と、深く納得させられる箇所がいくつかありました。視点を変えつつ考えたい人、物事の裏側を知りたい人におすすめしたい。文系でも分かります!
行動経済学とはそもそも、
人間がかならずしも合理的には行動しないことに着目し、伝統的な経済学ではうまく説明できなかった社会現象や経済行動を、人間行動を観察することで実証的にとらえようとする新たな経済学。
という、なかなか惹かれるやつ。
去年ノーベル賞を獲って一躍有名になった分野…と私はとらえていますが、マーケティングからの関連で注目している人がWeb上にも多いみたいですよ。
みんなが書き手になる時代のあたらしい文章入門

みんなが書き手になる時代の あたらしい文章入門 (スマート新書)
- 作者: 古賀史健
- 出版社/メーカー: ピースオブケイク
- 発売日: 2017/12/03
- メディア: Kindle版
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『嫌われる勇気』の古賀さん、以前も『20歳の自分に受けさせたい文章講座』を紹介していますが、彼の文章術本がとても好きです。
難しくない、ややこしくない、かっこつけてない、もちろんイキってない、読みやすいのに単純なのに深い。ザ・本質として書いている。
文章に対する姿勢がいいのです。正直に書かれていることが伝わってきます。
恐ろしく論理が通っているのに人情味すらある感動。
短い本なのでサクッと読めて、入門にも復習にもいいと思います。
私はKindleアンリミテッドで読みました!今だととてもお安いですね…。
で、あまりに良かったので買おうと思ったんですが。
このスマート新書っていうのが、どうやらサイズが小さいらしい?新書サイズじゃないらしいけど文庫とどっちが大きいのやら?って、本棚のどこに置くか困りそうだったので、うーん、いつかKindleで買います。まとめ買いの時にでも。
断片的なものの社会学
これだけちょっと古かったですね、2015年。
社会学ってなんだか捉えどころのないイメージ。そのまま読み進めていると、なんて言ったらいいのかしら、地味にリリカル、繊細、白黒はっきりつかない、ねこ、人のこだわり、変なこと、悲しいこと嬉しいことたくさん入っていました。
そもそも作者の岸政彦さんは、立命館大学の教授。で、『ビニール傘』で作家デビューもされています。
『ビニール傘』はよかった、去年の上半期ベスト10に入れてます。三島賞くらいあげたらよかったのに!
あれ読んで、おぉ、好き……ってなったので、本業である社会学の方の著書を読んでみたらやっぱり好きでしたね、というか学問っていうよりエッセイ風で読みやすかったです。
おすすめ!!!
さて、お待たせしました(?)、ここからフィクションですよー。
海外1冊、その他は国内です。
『嘘の木』 海外文学
ミステリであってSFファンタジーであってビルドゥングス・ロマンなのに女性差別と戦う話でティーンエイジャーの話なのに科学で裏打ちされていて少女の復讐譚なのに心に突き刺さるお話で母娘。あぁ母娘。
盛りだくさんすぎて。好き。完璧に全盛り。好き。
私が女だから刺さったという面もあるかもしれないです。話運びも面白かったと思いますよ、きちんとミステリしてました。犯人にはびっくりしました。
Twitter文学賞の海外は、これに投票したのです。私の今年の海外ナンバーワンです。
それまでの明日
今年の上半期はこれなしでは語れない、14年待ってたよ原尞!
ハードボイルド探偵ものでシリーズものです。同シリーズの『私が殺した少女』が、約30年前に直木賞獲ってますね。
探偵がクールなのは伝統みたいなものだとしても、周辺人物が波瀾万丈なのと、叙情が深くて嫌みなくキャラが濃いのは、原尞か横山秀夫かみたいなところありますよね。ハードボイルドの神様です。
今回は、事件そのものは未遂だったり小さかったりするんですが、周辺事情が面白いし世相を反映していて、単なる小ネタ扱いのスポーツライター裏話が気になって仕方がないです。書いてほしい。
あとはまあ、叙情です。圧倒的に。ハードボイルドなのに。
それでいてラストあれでしょ、身も蓋もないよ。叫びましたね。
次巻まであと14年待てる(って言いたいけどとても続きが気になる終わり方をされてしまったので早く読みたい、沢崎もしかして助けに行くんじゃないの?)
意識のリボン
意欲作すぎてびっくりしました。短編集。
あー、辻村深月とかもそうなんだけど長く書いていると何か行き詰まることがあるんですかね作家さんって。最初に「才能がキラめいて止まらない!」みたいな作風だった人は特に。
綿矢りさもなんだか一時期低迷というか、何を書きたいのか自分で分かってます?すみません私は読んでも分からないのです…みたいな時期がありましたが、最近また好調ですね。ここ数年で一番よかったです。
(辻村深月も好調そう) (個人の好みが反映された感想なので、気にしないでください)
綿矢さんの書く主人公の、崖っぷち感、自分で自分にどん引きしつつも何か面白いことを言わずにいられないツッコミ魂、脳内暴走していく感じ、とてもいい。
これから綿矢りさを読む人も、前に読んだことある人にも、これは必読と言いたいです。コタツは宇宙!
最愛の子ども
第8回Twitter文学賞(国内)で第三位になっていたので、読んでみました。初めての作家さんかと思いきや、『親指Pの修業時代』の方でした、あの超問題作の…。
『最愛の子ども』は、女の子がたくさん出てきて、百合…かな…?いやなんだか感触が違う…あれ、でも展開が…と面食らいながら、描写にうっとりします。
女子たちがたくさんいるあの社会で、どこまでも仲が良く、個性がぶつかり、完璧な一時代を作るあの感じ。
ただ一筋縄ではいかないのが、三人称の場面が「全部妄想」であること。目撃者としての記述が続いているけどこれもしかしなくても、誰も、見てはいない???
真実ではない?
渾然一体になったクラスメート「わたしたち」が観察する、青春時代の「何か」。視点がすごかったです。
ドレス
一つ前の松浦さんが一冊かけて青春を積み上げてくる感じだったら、藤野可織は1ページでそれをやっちゃう、みたいな描写があって震えます。(カネコフのところ)
それでいて、全体的にまったく訳が分かりません。短編集ですがだいたい訳が分かりません。
ガーリー感強めかと思ったら理不尽ものでして、これもっと話題になっていいのになぁと不思議。
最初の『テキサス・オクラホマ』はドローンものなのにとっても変。変です。
え、これ『おはなしして子ちゃん』超えたんじゃないのなんで話題になってないの表紙が地味だから?!
カネコフが完成していく様が美しい『私はさみしかった』が好きです。話の筋は辛いです。
表題作『ドレス』は、爆笑しました。
超動く家にて
爆笑するといえばこちら。
芥川賞候補作になった『ディレイ・エフェクト』もよかったけど、どちらを推すかと言われると、幅広い内容集まっているこちらの短編集が好きでした。
ナンセンスSF。コメディミステリ?でも思わず真顔になる話があったり、センスのいい人がナンセンスを書くとこうなる、というお手本だと思います。
文学部の話よかったし家は超動いていたし、マニアックな理系の話も分からないなりに楽しく(分かる人はもっと楽しそう、トラ技の圧縮)、系統としては『スペース金融道』の方ですね(好き)
どの話が好きだった?っていう投票で盛り上がっていたようです。
宮内悠介『超動く家にて』収録作品のTwitter人気投票・結果発表|今月の本の話題|Webミステリーズ!
焔
読んでいてぐるぐるする連作短編集なら、星野智幸もとてもいい。
ちょっと観念的すぎる話もあって、ついていけない点もありつつ、現実から少しずつ異世界にスライドしていくさまがクール。9編ありますが、2編くらいは大当たりがありそうな感触。
けっこう長年かけて書かれていた短編を、サブテキストでつないでまとめたとのこと。変化を楽しむ点でもいいのではないでしょうか。元々星野ファンなので楽しいです。
こんな感じの上半期でした。下半期もたくさん読みたい!
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