上半期、終わるの早くない?
2019年上半期の読了は76冊でした!もうだめだ…と思ってたけど去年より読んでました。ぜんぜんだめじゃない。生きてる。
ベスト10をご紹介するので、忙しい人は読書の参考にしてね!フィクション多め!
ノースライト
藤原伊織が亡くなって途方に暮れていた人々は、多くが横山秀夫に救われることもできたのではないか、という久しぶりの新作。『64』がよかったので期待値が上がりすぎていても、それがなかなかジャンル変えて越えてきてます。
建築&失踪&夫婦!
お仕事小説かつミステリ、バブルを考えながら人情。ミステリ風味弱めなので、人情モノとしての伏線が回収されていきます。池井戸潤が好きな人もぜひ。
ノースライトはきっと美しいだろうしこの家に住んでみたい、と思わせる渾身の建築になぜか住んでいない元依頼主。どこに行ったのかも分からず主人公は建築の世界をさまよいながら探す、探しているのは依頼主なのか真実なのか自分の人生なのかと。
混迷しながら救われる。
きまやのきまま屋では、横山秀夫を推しすぎています。
夢も見ずに眠った。
絲山秋子を読まずにいられないし、読んだら感心せざるを得ない人生です。いいのたくさんあるけど、今から読むならこれだし今まで読んできている人にもこれ。
旅小説としての一面もありながら、時間を越えてくる夫婦モノ。シンクロして読む人には突き刺さりそうなメンタル描写がありながら、ラストが清々しくて泣けます。
このラスト1ページにたどりつくまでに、人生は、これだけのエピソードしか必要としていないんです。それらがすべて、いいことも悪いことも、一冊に詰まっていました。天才じゃない? (絲山秋子は言うまでもなく天才です)
偶然の聖地
『スペース金融道』をふまえたうえで、ナンセンスに楽しく書いてくれる宮内悠介。端的に言うと、理系のカオスです。
本文に300以上の註がついているっていう時点で、奇書好きにはたまらないでしょう。そしてそれが単に説明じゃなくて、なんかいちいち面白い。私は日本語間違い探しになっている章が好きでした。
SFであって旅モノであって、バーチャル世界の冒険譚であって、メタフィクションかな? 世界医がかっこいい。作中作の構造が楽しい!
Twitterで津村泰水『ヒッキーヒッキーシェイク』が話題になっていましたけど、あれが好きな人はイケそうです。あと、筒井康隆『旅のラゴス』が好きな人もぜひ。
みかづき
あっ、ドラマまだ見てないけど、フォロワーさんが良かったって言ってました。
でも、森絵都ってこんなにすごかったっけ?
教育と家族。昭和36年から現代まで駆け抜けてくれました。
強い女性に振り回される主人公を追うのかと思ったらその他のキャラクターも魅力的すぎて、もう圧倒的な物語感。一気読みしてどっぷり浸れます。現代パートと、終わり方が好きでした。視点が広いよね。
読むのが今更だったんですけど、文庫になったの去年の末でしたね、買い時ですよ(本屋大賞で見かけて単行本を持っていたのに積んでいた自分は放っておこう)
ぼくはきっとやさしい
町屋良平が同世代でしかもサラリーマン作家であることが去年一番の衝撃でしたよね!?
芥川賞とってからもめちゃくちゃ数書いてくるの、なんなの?と嬉しい悲鳴しかない。
男メンヘラという煽り文句がありましたが、そ、そうかな。気弱ではあるので、はっきりはしてないですけど。勝手に運命感じちゃう系ではあるけど。
そして失恋するたびに水没しています。かわいそう。
ミニマリズムやブロガーが出てきて、現代風味も良い。でも結論としてこれは詩です。そしていつもながらひらがながおおい。
主人公がやっていた、iPhoneのメモ帳に日記を書き続け、見直して改竄すらしてるんじゃないかってくらい自己添削を続けるの、私もやってみましたが自家中毒的な闇があってヤバいですね楽しい。内省的な人は一度やってみたらきっと楽しいよ。でもハマりすぎると何の生産性もないような…。
サバティカル
中村航が! 学生向けかな?と思わせるあれやこれや恋バナを連発していた中村航が! 山田詠美に「で、アナタいくつ?」と毒づかれていた中村航が!
こちらはiPhoneのメモ帳ではなく、TrelloでTODOリストを作って転職の合間の人生の夏休みを過ごします。
期間限定の挑戦だったはずなのに過去と向き合い出したり、ストーカーまがいのことをしちゃったりとなかなか飛ばしてきて、最後セクシャルマイノリティーに攻め込んでます。
結論として、言葉は無意味だけど、縋って生きるしかない。
サバティカル(英: Sabbatical)とは、使途に制限がない職務を離れた長期休暇のこと。
インヴィジブル
オースターを全部読むまでは死ねない、という強い意志で生きているので最新作を読まないようにしていますが、あまりにキツかったら読みます。 この上半期で読みました。
最新作だけど「渋くなって帰ってきた『ムーンパレス』」的な趣があってスラスラ読める一冊。
でも一筋縄ではいかないところが、時間の越え方。観察者「僕」が章も時間も越えてきて、青春をしっかりまとめあげてくれます。キャラはね、好き嫌いありそう。
隙あらば詩を挟んでくるし、謎も残るので考察が捗る。もう全てがインヴィジブル!タイトルの意味たぶんそういうこと。
オースターファンでよかったです。
オリジン
なんかダン・ブラウンって今更だけどすごいことしてますね。そしてそれが続いています。ラングドンシリーズが意外とダレてません。『インフェルノ』もよかったもんね…!
「人間はどこから来て、どこへ行くのか」「ていうか何をしているのか」という問いに真っ向から挑むダン・ブラウンが書くのは、若い天才。
宗教とバトりながら詩を探してサグラダ・ファミリアを駆け上り、メディアを使いながら現代を描写する。匿名者によるWEB速報と、AIによる道案内。
そういうの使って根源までたどり着くのすごすぎない?これはもう、かなり震えました。科学のところ難しいけど楽しいです。
小説家という職業
これは古い、ただ『作家の収支』と区別がついていなくて、こちらを読んでいなかったんです。で、『作家の収支』よりも面白かったです。
9年前の本なので、森博嗣の先見の明が確かであることが分かります。ネットに関するところが特に。本については、むしろ時代がまだ森博嗣に追いついてませんね…。
名言が飛び出す系なので、本が好きな人はぜひ一読を。
新書で一番好きだったかもしれない。
わたしを空腹にしないほうがいい
Amazonに取り扱いがない本を挙げてもいい?
オススメしていただいたので買ってみたら大当たり。若い料理好きな歌人さんの、食にまつわる叙情エッセイです。
みずみずしい文章とは、こういうもののことを言うんですね。読むだけで若返りそう(感性のみ)
福岡では、ajiroで買えますよ!
2019年の後半も、楽しく読んで生きましょうね!
【今までの読了本から】