上半期の読了本は75冊でした!
今回は特例をつけます。
・冊数の集計は1〜6月
・しかし「これは上半期に読むはずだった」と心底感じる本をガシガシと7月に読んでいるので、オススメ本にはそれらも入れる!辻褄は年末に合わせる。
ののはな通信
特例を作っておきながら最初のはちょっと前の刊です。2018年から目をつけていて、やっと読みました。
私はどうやら、往復書簡モノが好きみたいだ。メールに取って代わられても良い。クラス内で回されていたお手紙なんてもっと良い。
仲良し二人組だった「のの」と「はな」の手紙でのやり取りが中心なんだけど、性的指向の絡まりもあって、友達になり恋人になり、友達でもなくなり、ほかの人と結婚して日本を離れメル友になり…と、その交流27年にわたる。
高校生から始まった二人は、最後の方では40代になっている。
もうこれね、自身の友情の追体験と、現在の我が身の振り返りが捗りすぎて。
社会情勢やサブカル、人の生き方なんてところまで考えてしまった。
中年になった「のの」の独白する、この一節が大好きだし真理だと思う。
一人でも食べて寝て生活はできるけれど、本当の意味で生きるのはむずかしい。自分以外のだれかのために生きてこそ、私たちは「生きた」という実感を得られるのかもしれない。だれかというのは、ひとに限らず、動物でも植物でもいい。物質でもいいかもしれない。それを通して社会とつながっている、社会のなかにたしかに自分の居場所がある、と感じられるものであれば。
宝島
「エンタメ大勝利!」と天に拳を突きあげた一冊。うのさん教えてくれてありがとうー!
こちらも2018年刊行、第160回直木賞受賞作でした。
舞台はちょっと前の沖縄。なかなかセンシティブな沖縄戦後史を生きた人たち。Amazonの紹介がけっこういいので引いてきていい?
生きるとは走ること、抗うこと、そして想い続けることだった。少年少女は警官になり、教師になり、テロリストになり―同じ夢に向かった。超弩級の才能が放つ、青春と革命の一大叙事詩!!
20年にわたるみんなの生き方、「この世界から出たくない」と思って一週間かけて読んだ。出たくなかった。。。
本の中だと知っていても、こんな世界があるのか、と驚く。感情豊かでユーモアがあって、切実さがあって美しい自然があって人の生活があって、愛と踊りと魂がある。
初めて読んだ作家さんだったけど、文体もとても好みでした。力作~!!!
ピエタとトランジ
テレビドラマ『相棒』をこよなく愛する私です。シリーズ1から見てます。つまり事件を解決するバディもの(現代)が好き。
そして今回ここまで、とにかく作中での時間経過が長いね、嬉しいぞ。人間存在の成長、とは。。。なんて考えながら読んじゃうの楽しいです。
全部ぜーんぶいっしょに解決しようね
そもそもピエタもトランジも、『おはなしして子ちゃん』の一編に登場した女子高生たちだったのが、さすが完全版、本当に本当の最後まで書かれていきます。 『ののはな通信』より長かった。
普段はただの舞台装置として扱われがちな「事件を呼ぶ体質」について、こうやって扱って転がしちゃうの藤野可織天才じゃない???あっ『ドレス』書いちゃう人だから当たり前か、天才でしたね。
(参考記事…2018年上半期の読了本からベスト10! )
主婦時代のエピソードも好きだけど、終わり方が神がかっていますね。最後に二人の出会いである短編(『おはなしして子ちゃん』に収録されている)が置かれているので、初読の人は感触が違うんだろうなと思います。それも羨ましい。
とりあえず電子書籍の無料試し読み分だけでも読んでみて!お願い。 クリームソーダ!
持続可能な魂の形
知っている人ならわかってくれるかもと思うのですが、私はジェンダー論に対して関心は高いものの、気持ち的に乗り越えるのが大変、で、遠巻きに見守っている感じです。
だからそっち系のフィクションにも好きなのと苦手なのがあって。
最高峰に好きなのがこれです!
松田青子『持続可能な魂の利用』読了。初長編でこれ?私はあなたの言ってることが全部わかった…。魂は減るし毎日がレジスタンス!態度強めだけど、だからこそ?フィクションこれ系は今の最高峰と思える。アイドルから国までカバーする冷静さにオタクな熱さが混ざって、とにかく今のここのリアル。
— きまや (@kimaya4125) 2020年7月13日
松田青子たしか3冊くらいしか読んだことないけど、初長編にして、「私あなたの言ってることぜんぶわかる」になりました。
私は芸能人に詳しくないんだけど、Twitterでフォロワーさんがすごく褒めてて覚えた、「てち」さんのことなんだと思う。
アイドルとは、なんなのか。
どうして、一部に過ぎないとはいえあの人たちは、力で言うことをきかせようとするのか。ことあるごとに馬鹿にしてくるのか。
からの
この国はどうする?
まで。
女性は読んでほしい。
君がいないと小説は書けない
そして私はなぜか、白石一文の言っていることも「ぜんぶわかる」。なんでだろう、読みすぎたかな…。前はそんなに好きじゃなかったんだけど。
この新刊がよかったので、このあと5冊くらい続けて白石一文読みました。
自伝的要素濃いめな印象です。白石一文はやっぱり、最後は人間存在の不思議さみたいなので締めてくるよねー。
ただ、今から初めて白石作品を読むならこれじゃない方がいいかもしれない…。私は『ほかならぬ人へ』から入って(その前に最初の3冊読んで怒ってたけど、これで和解)、『翼』が好きです。
次点でSF(っぽいのを)2冊どうぞ。
さあ、井上真偽の連作短編集を読むのです。SFの流行など知らないよ、「連作」短編の力業の華麗さを思い知れるよ!
高校生の詩論と日常、に、AIをぶち込んでくる町屋良平。この人は怪物だと思う。よかった。
ここから海外!
わたしのいるところ
Twitter文学賞の海外は、これに投票しました。
去年、ルシア・ベルリンがとても流行っていて、私も途中まで読んだんですけど、わかるんだけど、あれ重すぎない?みんなあんなの読んでだいじょうぶなの??次の日起き上がれるの?
私はあんなに苦しいの全部読めない。。。ということで、じゃあ、ラヒリ。
45歳独身女性の、ローマでの日常生活の断片たちをよせ集めた長編。とてもよく身になじんだ居場所と、親しみ深い孤独。 静かな気分でしんみり読めました。
生者と死者に告ぐ
〈刑事オリヴァー&ピア〉最新作。7作目。ドイツミステリ。
このシリーズがとても好きなんだけど、どんどん力強くなってきていて、情緒が溢れていてもうだめだ、好き。こんなに刺してくるミステリってそうそうない。
「関わりつづけるかぎり、克服することはできないものね」P293
「普通の人間はそのうち前を向き、過去を克服するものだろう。だがヘレンにはその力がなかった」P377
感情の交互浴だ。希望と失望の繰り返しは精神衛生上よくない。P597

- 作者:ネレ・ノイハウス
- 発売日: 2019/10/30
- メディア: 文庫
あと、だいたいがっつり長くて事件も込み入っているので、なんか違う世界に行きたい時に重宝するシリーズです。翻訳は酒寄先生ですし、日本語もいいです。(シーラッハ訳している人!)
『特捜部Q』が好きな人とか好きそうだと思います。『深い疵』から読んでいきましょう。
次点でもう一つミステリ。教えてもらって読んだらとてもよかった。父と戦って乗り越えろ!(肉弾戦)
オースターの新刊は、、、良いんだけど、、、とりあえず私は絶句でした。
『サンセット・パーク』があと残り40ページなんだけど、これをこうしてここまでなのにあと40ページって、これからどうするつもりなの!あなたはこういうときロクなことしないから、もう!
— きまや (@kimaya4125) 2020年7月22日
ポール・オースター『サンセット・パーク』読了。『ムーン・パレス』再来のようでいて28歳。関わりのある人たちからも語られる状況と本人の解離。和みとしての野球話。簡単に崩れる日常。法律には従っておけ、という警句に読めるけど、不器用だとそれもできないほど貧乏になる時代なんだよね、と。
— きまや (@kimaya4125) 2020年7月23日
ジンマーもキティもソルもそんなスケールダウンしてて本人もそんな調子で、これからどうするつもりなのマーコ…と思って泣いてた(主人公はマーコではない
— きまや (@kimaya4125) 2020年7月23日
ここからノンフィクション!
今年はエッセイが豊作だよー。
うたうおばけ
くどうれいんがめきめき、やばいくらいよい。
詳しいことはこちらでどうぞ。
エッセイの連載が群像で始まるらしいね!
神様はいつも両方をつくる
公式サイトで買いました、浅井健一ストーリー&ダイアリー。何、ストーリー&ダイアリーって?
小話と日記でした。絵本ドーン!じゃなくて新鮮。
私はこの人の言葉が大好きです。
好きだった人は、まっすぐな綺麗な髪の毛をしていた。話すことが魅力的というか素朴というか、いちいち俺の心に入ってきた。P22
正しい行いをして生きていこう。神様も見ているが、何より自分自身が見ている。P147
Instagramもやってらっしゃる。
最近一番心温まるコンテンツ、ベンジースマイルクッキング。 https://t.co/efx5eQZ2a9
— きまや (@kimaya4125) 2020年7月15日
ブードゥーラウンジ
鹿子裕文『ブードゥーラウンジ』読了。福岡にあるライブハウス周辺にまつわるノンフィクション。個人的にさまざまな文脈が回収されてびっくりした!それ知ってる、そういう見方と書き方するんだ、なことが楽しいので福岡の人々とロックンローラーに問答無用でオススメ。
— きまや (@kimaya4125) 2020年7月19日
ノンフィクションというかドキュメンタリーなのかな、福岡在住の編集者さん(もちろん作家さんでもあり、ライターさんでもある)が見てきた、福岡市天神の音楽シーン。
長らく福岡に住んでいる音楽好きな私としては、知ってる・名前だけ聞いたことある・声だけラジオで聞いたことある・ここ行ったことある・見たことある・友達が後輩の友達の先輩、のオンパレードで、大変楽しめました。
文章の熱量に圧倒される体験、音楽が聴こえてくるような瞬間。奇跡のバランスで成り立っているので、福岡県民の必読書に認定すべきだと思った。
ビッグバンて、そんな天神わたし全然好きじゃないなーぁ、まあ私は古都におるよ(思っているけど普段言えないヤツ)
次点で春樹。
春樹が父親について語ったらビビるよね。とても語ってた。
このエピソード知ってる!みたいなことも多く感じました。意外と小説に書いてる。
例えば、降りて来なかった子猫の話は、『スプートニクの恋人』に。
村上春樹『スプートニクの恋人』再読了。こんなに寂しい話だったっけ…?となる。表現は冗長なのに展開が早いから意外に短いんだよね。すごく凝縮されている。色々なモチーフ勢揃いだし、きっと大事な話なんだろうな。ミュウが同世代になってた。
— きまや (@kimaya4125) 2020年7月15日
それでは、2020年後半も楽しく読んで生きましょう!
前回まではこちら。